[広州(中国)/ジュネーブ 11日 ロイター] – 新型コロナウイルスによる肺炎の累計の死者数が中国で1000人を超える中、世界保健機関(WHO)は新型ウイルスの感染拡大が世界に及ぼす影響はテロリズムを超える恐れがあるとして一段の警戒を呼び掛けた。
WHOのテドロス事務局長は11日、新型ウイルスの感染拡大は「世界全体に非常に重大な脅威」を及ぼすとし、「世界は目を覚まし、このウイルスを最大の敵だと認識する必要がある」と指摘。新型ウイルスの正式名称が「COVID─19」に決定されたことを明らかにすると同時に、1年半以内に新型コロナウイルスのワクチンの用意が整う可能性があるとの見通しを示した。
感染症研究の第一人者で中国政府の専門家チームを率いる鐘南山氏はロイターのインタビューに応じ、中国国内における新型コロナウイルスの流行は2月にピークを迎え、4月ごろに終息する可能性があると予想。「今月の半ばか下旬にピークを迎える可能性がある。その後はやや横ばいのような状態になり、それから収まるだろう」とし、「4月ごろに終息すると望んでいる」と述べた。
鐘氏によると、中国国内の一部地域では既に状況が改善しており、新たな感染件数は減少している。
WHOによると、中国の死者数は1017人、感染者数は4万2708人。中国本土以外では24カ国・地域で319件の感染が確認された。中国本土外の死者数は香港とフィリピンでそれぞれ1人ずつと、合わせて2人となっている。
中国の統計によると、新型ウイルス感染の死亡率は約2%で、死亡した人の多くは高齢者、もしくは既往症を持った人たちだった。
新型ウイルスの感染拡大が経済に及ぼす影響についても懸念が広がっており、この日は米セントルイス地区連銀のブラード総裁が講演で、中国経済は新型コロナウイルス感染拡大への対応措置により今年上半期は「目に見えて減速する」との見方を表明。新型ウイルスの封じ込めに向け中国政府が打ち出した対策はかなりの規模で、これにより中国の今年上半期の経済成長は、こうした対策がない状態と比べ、目に見えて減速する」と述べた。
このほか、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長もこの日の議会証言で、米経済済見通しに対し前向きな見方を示しながらも中国が発生源となっている新型コロナウイルスの感染拡大などに懸念を表明した。
銀行筋によると、新型ウイルス感染拡大による影響に対応するため、中国では300社を超える企業が合計574億元(82億ドル)の融資を申請。
JPモルガンは第1・四半期の中国の成長率見通しを下方修正したほか、ノルウェーのエネルギーコンサルティング会社、ライスタッド・エナジーは新型ウイルス感染拡大で世界的な原油需要は今年は約25%減少するとの見通しを示した。