イタリアで新型コロナウイルス感染が急増し、欧州で最悪の状況となった背景には、不運と安全対策が不十分だったことが挙げられる。同国が新たな感染症例を探し出そうと綿密な検査を行っていることも感染件数を膨らませる結果になっていると、保健当局は指摘する。

同国では感染症例が283件、死者数は7人にそれぞれ増えており、コンテ首相率いる伊政府は対応に追われている。ミラノからベネチアに広がるイタリア北部の豊かなロンバルディアおよびベネト地域の大半が、事実上の封鎖状態にある。

Italy's Rich Northern Regions in Lockdown as Coronavirus Spreads
客のいないバールの横を通り過ぎる歩行者、ミラノで2月24日Photographer: Francesca Volpi/Bloomberg

イタリアでなぜ、ウイルス感染が隣国よりも拡大しているのかは、同国政府や保健当局を悩ませている疑問だ。イタリアでの急速な感染拡大は、欧州の他地域で拡大ペースがより緩やかなのと対照的で、ドイツの自動車部品サプライヤーやフランスのスキーリゾートでは当局が感染源とされる人物を速やかに特定し、感染の広がりを食い止めた。

イタリアでのウイルス流行は、2月18日にミラノ近郊にあるコドーニョの病院で治療を受けた38歳の男性に端を発するとされ、この男性から数十人の患者と医療従事者が感染した。同男性は最近中国に渡航しておらず、どのように感染したのかは謎のままだ。

イタリアでそれまで確認されていた感染症例は、休暇で訪れていた中国人夫婦を含む3件のみで、すべてローマだった。

ミラノ大学のウイルス研究者、ファブリチオ・プレグリアスコ氏は「これらすべての根底にあるのは、全くの不運だ」と指摘。「肺炎に似た症状を持った患者が農業が盛んなロンバルディアのコドーニョ地方にいて、コロナウイルスに感染しているとは一体誰が想像できただろうか」と述べた。

原題:Safety Failures, ‘Bad Luck’ Fuel Italy’s Coronavirus Surge (2)(抜粋)