【ワシントン時事】米労働省が3日発表した3月の雇用統計は、好調だった労働市場が一気につぶれたことをはっきり示した。新型コロナウイルスの感染拡大による経済への打撃を示す「氷山の一角」(米エコノミスト)にすぎず、景気の深刻な冷え込みは確実。年末に向けての回復シナリオも不透明だ。
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「光の速さで悪化する経済破綻を形容する言葉が見当たらない」。米銀エコノミストのスコット・アンダーソン氏は驚く。非農業部門の就業者数は季節調整済みで前月から70万1000人の減少と9年半ぶりのマイナスに沈み、失業率は4.4%と前月から0.9ポイントも悪化した。
市場では、これほどの雇用悪化は想定外だった。調査期間が政府による外出などの自粛要請が出る3月16日より前だったからだ。労働省は面接調査の取りやめなど「データ収集は感染拡大の影響を受けた」と説明。雇用環境がすでに激変していた可能性を示唆している。
経済活動の急停止は、就業者の約7割を占めるサービス業を直撃。レストランやホテルの8割以上が営業停止に追い込まれたとされ、これらの業種の雇用は前月から約45万人減と、落ち込み全体の6割強に上った。
労働省が集計を始めた1939年以降で最大の雇用減は45年9月の約200万人。失業保険申請は直近の2週間で計約1000万人に上っており、4月の雇用減は約75年前の記録を大きく超えて最悪の内容になる可能性がある。連邦準備制度理事会(FRB)は失業率が「今後2、3カ月で10%超」(高官)とみている。
政府は先週、個人への現金給付などを盛り込んだ2兆ドル(約217兆円)規模の経済対策を実現した。野党民主党のペロシ下院議長は、追加策として雇用創出効果のあるインフラ整備を提案していたが、この日、「(先週と)同じ対応が必要だ」と発言。失業への「即効薬」を求める姿勢に転じたことを示唆した。