- マクロン大統領、試験指揮する研究者と面会するためマルセイユ訪問
- 米国のヒドロキシクロロキン備蓄は最大2900万回分
フランス国家医薬品安全庁(ANSM)は10日、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンを投与された新型コロナウイルス感染症(COVID19)患者に心臓への副作用が見られた事例が43例あると明らかにした。同薬については、トランプ米大統領がコロナ治療の状況を一変させる「ゲームチェンジャー」になり得ると繰り返し述べている。
全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチの治療にも利用されるヒドロキシクロロキンの米国での備蓄は最大2900万回分に上るが、ANSMが示した有害事象のデータはCOVID19のパンデミック(世界的大流行)に歯止めをかけるため効果が立証されていない医薬品を使用するリスクを浮き彫りにしている。
9日にはマクロン仏大統領が、ヒドロキシクロロキンの試験が行われている南部マルセイユのクリニックを訪問。ヒドロキシクロロキンが幅広く知られるようになるきっかけとなった試験を指揮する仏研究者ディディエ・ラウール氏と3時間余り面会した。マクロン氏の側近はこれについて、お墨付きを与えるものではないと説明した。
ラウール氏の試験手法は、プラセボ(偽薬)を投与する対照群がないために批判を浴びている。
ANSMによると、フランスでは3月27日以降、新型コロナ感染症患者への試験的な医薬品使用に関連した副作用の事例が約100例、死亡が4例、さらに蘇生措置を講じた例が3例あった。副作用が出た約82例は「深刻」で、その大半はヒドロキシクロロキンと抗HIV薬ロピナビル・リトナビルが半分ずつを占めた。
ANSMは発表文でこれら医薬品について、開発対象の疾患以外の治療に利用されているなどと言及し、「厳密な医療上の監視下で医療機関でのみ使用されるべきだ」と強調した。
原題:Malaria Drug Hype Lures Macron as Hope Gets Ahead of Science (1); France Reports Heart Incidents Linked to Drug Promoted by Trump(抜粋)