22日、ストックホルムで春の陽気を楽しむスウェーデンの人々(AFP時事)
22日、ストックホルムで春の陽気を楽しむスウェーデンの人々(AFP時事)

 【ロンドン時事】新型コロナウイルスの感染が深刻化し、多くの国がロックダウン(都市封鎖)状態にある欧州で、封鎖をしない北欧スウェーデンの「独自路線」が注目を浴びている。ソフト対策の背景には、強制より個人の自主性を尊重する伝統が根強いほか、医療制度が充実し医療崩壊の懸念が少ないことなどがある。さらに多数が自然感染して免疫を持つことでウイルスを抑制する「集団免疫」の形成も念頭にあるとされる。

【図解】新型コロナウイルス 世界各国の感染状況

 スウェーデンの新型コロナウイルス対策をめぐっては、経済的打撃が少ないとして期待が寄せられる一方、高い致死率など感染拡大のリスクに懸念も出ている。

 スウェーデンでは感染が広がる中でも小中学校は開校し、飲食店やジムも通常通りの営業を続けている。集会も50人以下なら可能。学校閉鎖や外出禁止といった厳しい規制を敷く国が多い欧州で異色の対応だ。首都ストックホルムのカフェやレストランは今も、食事や会話を楽しむ人々でにぎわいを見せる。

 政府は、封鎖の代わりに国民に「責任ある行動」(ロベーン首相)を求め、他者と距離を保つ「社会的距離」の実行を呼び掛けている。これに対して大方の市民は、政府方針を許容しているようだ。

 ストックホルム在住約40年のビヤネール多美子さん(85)は電話取材に「スーパーや農園に1人で出掛けたりしてる。混んでいれば地下鉄に乗らないなど、自分の判断で行動できるのがありがたい」と語る。緩い規制に不安を訴える人もいるが、「スウェーデン人は自分で決めることに慣れている」のでパニックにはならないという。

 しかし、スウェーデンでは23日時点、感染者が約1万6000人なのに対し、死者は2000人近くに上る。厳格な外出規制を実施している隣国フィンランドやデンマークなどと比べ高い致死率で、封鎖しないことによるリスク増に対する懸念も強い。報道によれば、スウェーデンの研究者らは地元紙への寄稿文で「(事態悪化を防ぐ)迅速かつ抜本的な措置」が必要とし、政府に政策見直しを迫った。

 一方、スウェーデン保健当局の疫学者、アンダース・テグネル博士は最近、地元メディアに「首都人口の多くが免疫を獲得し、感染抑止に効力を発揮し始めた。数理モデルは5月中(の集団免疫達成)を示している」と解説。「独自路線」が功を奏するかどうか、世界が展開を注視している。