きょうのニュースをみて驚いた。トランプ大統領が新型コロナウイルスの予防薬として期待されている、抗マラリア薬・ヒドロキシクロロキンを服用しているというのだ。ロイターによると大統領は「1週間半ほど服用してきた。1日1錠だ」と語っている。この薬についてはだいぶ前に大統領が、「ゲームチェンジャーになる」と期待を込めて語っていたことを思い出す。朝日新聞デジタルによれば、「米国でも臨床試験の段階だが、米食品医薬品局(FDA)は心臓に深刻な副作用を起こすリスクがあると警告している」という。その薬を自ら服用し、効果をアピールする。少し前に「消毒薬を飲めばいい」とジョークを言って顰蹙を買ったが、大統領選を控えて藁をも掴もうという思いだろうか?
どうやら大統領には一度言った発言に固執する“性癖”があるような気がする。似たような印象は安倍首相からも受ける。いわゆるアベノマスクだ。布製マスクを一世帯あたり2枚ずつ配布すると宣言したあのマスクだ。あれだけ国民の顰蹙を買ったのに、いまでもこのマスクを愛用している。国会でも記者会見でもテレビに登場するときには必ず着用している。首相ともなればテレビに映る機会も多い。マスクをつけていれば宣伝にもなるし、自らの心情を訴えるPRにもなる。そんな思いから肌身離さずつけているのだと思う。だが、見る側の国民の多くが「うんざりしている」ことに総理は気がついていないのだろうか。最近は布マスクの回収ボックスが設置されている。
政治家が政策にこだわるのは悪いことだとは思わない。だが、ごく少数の側近の意見に耳を傾け、一般大衆の心の変化を読み取れなくなった政治家は哀れだ。特定給付金をめぐる混乱、検察庁法改正案の採決見送りなど、側近政治の弊害が至る所で顕在化している。朝日新聞デジタルによるとトランプ大統領はヒドロキシクロロキンを服用する理由について、「たくさんの良い話を聞いているからだ」と説明している。おそらくこれも側近の意見だろう。FDAという正式な機関の警告を無視する大統領の姿勢に、大いなる不安を感じる。布マスクを配布すれば「不安がパッと消える」と豪語した首相側近の進言と同じだ。大統領も首相も側近たちも、木はみえても森はみえないのだ。