31日、香港で記者会見する民主活動家の黄之鋒氏(左端)(EPA時事)
31日、香港で記者会見する民主活動家の黄之鋒氏(左端)(EPA時事)

 【香港時事】香港政府の林鄭月娥行政長官は31日、立法会(議会)選挙の1年延期を発表した。中国が制定した「香港国家安全維持法」(国安法)の下、厳しい選挙戦を強いられていた民主派はさらなる逆境に立たされることになる。

 民主派陣営は今回の選挙で、定数70の立法会における過半数議席獲得を目指してきた。多数派になることで政府予算案の否決を繰り返し、行政長官を辞任に追い込むことが最終目標だった。

 中国共産党にとってこうした動きは「政権転覆を図る行為」にほかならず、民主派の躍進阻止が不可欠となっていた。林鄭長官の任期は2022年夏まで。延期後の選挙で仮に民主派が多数を占めたとしても、長官罷免には2度の予算案否決が必要となり、辞任は事実上不可能となる。

 また民主派は今回、候補者絞り込みのため予備選挙を独自に行うなどしてきたが、当局の規制強化や予算面の問題から、1年後に再び同様の準備を行うには相当な困難が伴う。民主派の間では、次回選挙までに「民主派の徹底的な摘発が進む」との懸念の声も強まっている。

 予備選では、習近平政権への対決姿勢を鮮明にする「抗争派」と呼ばれる若手候補が多く選出され、本選挙でも市民の幅広い支持を集めると期待された。一方、選挙管理当局は立候補届け出期間終了を待たず、現職の立法会議員4人を含む民主派12人の出馬資格を剥奪するなど、民主派躍進の芽を早々に摘む動きを見せていた。

 政府側としては、選挙を先延ばしにしたことで、親中派の体制強化と民主派の弱体化を図る思惑があるとみられる。また、11月の米大統領選の行方によっては米国の対中強硬姿勢に変化が出る事態も予想され、こうした現状も延期決定の一因になった可能性がある。