4~6月期の国内総生産(GDP)は戦後最悪のマイナス成長だったが、3割超の崩落を記録した米国や欧州と比べれば落ち込みは抑制された。相次ぐ都市封鎖(ロックダウン)で人の流れを強制的に止めた欧米に比べ生産活動への影響が限定的だったのに加え、発生源の中国経済がいち早く再開した恩恵を受けたとの指摘もある。
新型コロナウイルスの対応で日本以上に厳しい措置を取った欧米では、4~6月期の実質GDPは米国が前期比年率32・9%減、ユーロ圏19カ国では40・3%減と大幅に減少した。経済活動の再開がユーロ圏より遅れた英国は59・8%減と記録的落ち込みになった。
これに対し日本の法制度では都市封鎖はできず、知事による不要不急の外出自粛要請やイベントの制限にも罰則はない。緊急事態宣言の発令中も人の流れが続いたことが個人消費や公共投資を下支えしたようだ。
一方、経済再開が先行した中国は1~3月期のマイナス成長から4~6月期には55%程度の大幅なプラス成長に転じた。中国は日本の輸出入総額の2割超を占める最大の貿易相手国。対中輸出の低下は6月時点で前年同期比0・2%減にとどまり、2桁の大幅減が続く欧米に比べて影響が限られた。
コロナの拡大で各国が1~3月期からマイナス成長に陥ったのに比べ、日本は令和元年10月に消費税増税を実施したことで同年10~12月期以降、3四半期連続のマイナス成長となった。国富の減少はその分蓄積しており、単純には比較できないという事情もある。
(田辺裕晶)