[31日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のクラリダ副議長は31日、FRBが新たに導入した金融政策アプローチについて、失業率が低いだけでは利上げする理由にならないことを意味し、教科書的なモデルとは異なる経済を反映しているとした上で、金融政策の枠組みは「強固に」変化したという認識を示した。 

クラリダ氏はピーターソン国際経済研究所が主催したイベントでの講演で「新しい枠組みの下では、物価上昇率が目標もしくは金融安定を脅かす水準を継続的に上回って推移するか、そうした可能性が見込めない限り、低失業率だけでは政策対応の十分なきっかけにはならないだろう」と表明した。 

さらに、失業率の低下がインフレ率の上昇につながるという負の相関関係(トレードオフ)に基づく計量経済モデルは、「過去も含めて間違っている可能性があり、一つの経済モデルに基づく金融引き締めを正当化することは困難だ」と述べた。 

FRBは先週、インフレ率が「一時的に」2%を上回ることを容認し、最大雇用の確保に重点を置いた新戦略を発表した。 

クラリダ氏は、2012年以降、経済が大きく変化したことが最新の研究で明らかになっており、同じ枠組みを維持した場合、2%目標を下回る物価が市場や家計の意思決定に組み込まれてしまう恐れがあり、日本の例のように低成長軌道をたどりかねないと指摘。景気の悪化後に物価を2%に戻すことだけを目的とした従来の政策では「インフレ率は平均で2%未満にとどまる傾向」があり、それはFRBの政策金利を低めに抑え、失業率の上昇とともに長引く景気の悪化をもたらす恐れがあるとの考えを示した。 

また、FRBは今後、経済見通しとして公表しているドットチャート(今後の政策金利の推移を点で示したグラフ)などの見直しの検討に着手するほか、フォワードガイダンス(先行きの政策方針)やバランスシートを巡る議論も再開するとした。 

<コロナ継続なら手詰まりも> 

こうした中、アトランタ地区連銀のボスティック総裁は31日、新型コロナの感染拡大が継続する限り、政策手段は限られるとした上で、現時点で経済回復を後押しするための方策として、月ごとの資産買い取りといった政策は最善とは言えないとの考えを示した。 

ボスティック氏は「何よりもこれは公衆衛生上の危機であり、そうした現実から目をそらすことは、われわれが間違った物事に焦点を当てることにつながる恐れがある」と述べた。 

さらに「われわれは支援を提供するために政策対応を続けることをかなり明確に示してきた。しかし、FRBの手段が経済をより安定した軌道に乗せるための排他的もしくは最高のものだと考えることにはリスクが伴う」とした。 

エバーコアISIのバイスプレジデント、クリシュナ・グハ氏は、FRBが9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で新たな政策決定を行うかどうかは微妙と指摘。「FRBが9月か、大統領選終了後の11月に大きな決定を下すとは考えにくい」と述べた。