[6日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は6日、米経済は完全回復からはるかに遠く、新型コロナウイルス感染拡大が効果的に制御できず、成長が抑制されれば、下方スパイラルに陥る恐れがあると述べた。

パウエル議長は全米企業エコノミスト協会(NABE)会合向けの講演原稿で「景気拡大は完全にはなお程遠い。現在のような初期の段階では、政策介入に対するリスクはなおアシンメトリック(非対称)と言える。支援が少なすぎれば回復は弱くなり、家計と企業は不要な困難に直面する」と述べた。

その上で、米国が過去半年間、新型ウイルスや景気低迷に直面する中で、財政赤字を巡る懸念は一旦脇に置くべきだと主張。「現時点では(支援が)多すぎるリスクは小さいように見える。政策措置が必要以上だったと最終的に判明しても、無駄にはならない。回復はより力強く、より速くなる」とした。

この発言は、好調な分野と深刻な問題を抱える分野で経済が分かれる中で感染拡大が続くという重要局面に入った現状について、パウエルの分析がやや変わったことを示す。従来は、パンデミック(世界的大流行)後に向けて金融の「架け橋」を築くことに焦点を当てていたが、今や回復ペースが遅すぎると景気後退が悪化する恐れがあると示唆している。

米議会では追加新型ウイルス経済対策を巡る協議が停滞しているが、パウエル議長はFRBがこれまでに打ち出した措置以上の対応策については言及しなかった。

議長は、これまでのところ最悪の事態は回避されたとの認識を表明。政府の中小企業融資と失業給付の拡充により「不完全ではあるが力強い需要の回復が支援され、企業破綻と恒常的な解雇の件数はそうでなかった場合と比べ少なく、景気が下向いている時に通常見られる景気後退のダイナミクスはこれまでのところ大幅に抑制されている」と述べた。

ただ、企業投資の増加のように幾分か明るい動きが出ているものの、雇用の伸びが鈍化するなど、改善ペースは「緩やかになった」と指摘。「経済活動の再開を受けた当初の急速な拡大が、完全回復までの道のりの長期化に移行するリスクがある」とし、こうした減速が長期化すれば「脆弱性が新たな脆弱性を作り出し、典型的な景気後退のダイナミクスが触発される」恐れがあると警告した。

オックスフォード・エコノミクスのチーフ米金融エコノミスト、キャシー・ボスチアンチッチ氏は「経済は回復しているが、すぐに二番底の不況にならなくても、非常にゆっくりとした回復であれば、それ自体が問題になる可能性がある」と述べた。