【カイロ時事】ナイル川上流でエチオピアが建設中の「大エチオピア・ルネサンスダム」をめぐり、ダムに反対するエジプトに肩入れしたトランプ米大統領の発言が物議を醸している。米国はエジプトとエチオピアの協議を仲介し中立性が求められる立場だが、トランプ氏は「エジプトはダムを爆破するだろう」と主張。トランプ氏の偏った外交姿勢が、当事国の対立をあおる形となっている。
ナイル川下流のエジプトとスーダンは、ダムで川の水量が激減すると懸念。エチオピアと運営や貯水方法に関する協議を続けてきた。しかし、エチオピアは今年に入り、一方的に貯水を始めた。
トランプ大統領は、米国の要請に応じてイスラエルと関係正常化で合意したスーダンのハムドク首相との23日の電話で「エジプトは生き延びられなくなる。怒るのも無理はない」とエジプトに同情。「約束を破ったエチオピア向けの多額の援助は止めた」と語った。トランプ氏は、強権的なシシ・エジプト大統領と緊密な関係にある。
これにエチオピアは猛反発した。アビー首相は声明で「脅迫は見当違いで無益だ。いかなる攻撃にも屈しない」と批判。ゲドゥ外相は駐エチオピア米大使を呼び、「現職米大統領がエチオピアとエジプトの間で戦争を扇動するのは、国際法上も受け入れられない」と抗議した。
米政府は昨年11月、エジプトの要請を受ける形でワシントンにエジプト、エチオピア、スーダンの3外相を招き、仲介を本格化させた。米大統領選に向けたトランプ政権の外交成果の一つとするため2月の包括合意を目指したが、新型コロナウイルスの混乱で交渉は停滞。7月に貯水が始まって、トランプ政権の面目はつぶされた格好になっていた。