[ロンドン 5日 ロイター] – イングランド銀行(英中央銀行)は5日、金融政策委員会で量的緩和措置の資産購入プログラムを1500億ポンド(1950億ドル)拡大して8950億ポンドとすることを決定した。新型コロナウイルスの感染第2波で打撃を受けた経済に対応する。

拡大の規模は、ロイター調査のエコノミスト予想を500億ポンド上回った。

政策金利は予想通り0.10%に据え置かれた。

経済が新型コロナ発生前の水準を超えるのは2022年第1・四半期になるとし、来年末としていたこれまでの予想を修正した。

2020年の国内総生産(GDP)伸び率予想は8月時点のマイナス9.5%からマイナス11%へ、21年はプラス9%からプラス7.25%へそれぞれ引き下げた。

中銀は、今回の決定により2021年末まで国債買い入れを継続できると表明。「英経済の見通しは引き続き異例なほど不透明だ」とし「新型コロナの感染状況と公衆衛生上の措置、欧州連合(EU)と英国の新たな通商協定の性格と同協定への移行に左右される」と述べた。

さらに「インフレ見通しが弱まれば、必要なあらゆる追加措置を講じる用意がある」とした。

同時に発表された議事要旨と四半期見通し報告には、マイナス金利に関する言及はほぼ全くなかった。

JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル市場ストラテジスト、アンブローズ・クロフトン氏は「異常な経済ショックは異常な政策対応を正当化する」と述べた。

「ここ数カ月(新型コロナ)ウイルスが再流行したことにより、政府も企業も再び世界の資本市場から多額の資金を借り入れることになる。英中銀の(資産)買い入れは借り入れコストの上昇抑制に寄与する」と指摘した。

中銀の発表後、ポンドは対ドルと対ユーロで上昇。債券利回りは低下した。

<景気回復の鈍化、失業率の上昇>

中銀は今年第4・四半期のGDPが2%減少すると予想。イングランドでは再びロックダウン(都市封鎖)が導入される。

失業率は来年第2・四半期に7.75%でピークに達する見通し。直近の失業率4.5%を大幅に上回るとみられている。

2年後のインフレ率の予想は目標の2%で据え置いた。

キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ルース・グレゴリー氏は「当社は2022年末のインフレ率を1.5%付近と予想している。このため、中銀はさらに政策支援を拡大する必要がある」と述べた。

JPモルガンのアナリスト、アラン・モンクス氏も、来年のインフレ見通しがさえないことから、中銀は追加対応を迫られるとし、来年後半にもマイナス金利が導入される可能性が高まっているとした。

中銀は、英国とEUの貿易交渉について、たとえ合意が成立しても貿易に悪影響が出ると予想。

「EUとの新たな通商協定への調整で、当初どの程度の悪影響が出るか不透明だ」とし「金融政策委員会の予測は、企業がEUとの新たな通商協定に調整するため、2021年上半期の貿易が一時的に減少することも前提にしている」としている。

来年第1・四半期のGDPは、離脱移行期間の終了により1%影響を受ける見通し。