米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が当選を確実にしたことで、副大統領にはカマラ・ハリス上院議員(56)の就任が決まった。ジャマイカ出身の父親とインド出身の母親を持ち、米国で初めての女性副大統領となる。7日夜(日本時間8日午前)、デラウェア州ウィルミントンで、バイデン氏の勝利演説に先立って行った演説の内容は次の通り。

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 こんばんは。ジョン・ルイス下院議員(今年7月に死去した米国の公民権運動の指導者)は生前、「民主主義は状態ではなく、行動である」と記しました。彼が言おうとしたのは、米国の民主主義は保証されたものではないということです。それは、私たちが民主主義のために闘い、守ろうとする意欲と同じ強さしかなく、決して当たり前のものだと思ってはいけません。民主主義を守るためには、たいへんな努力が必要です。犠牲も伴います。でも、喜びや進歩もあります。なぜなら、私たち国民には、よりよい未来を築く力があるからです。

 今回の選挙では、まさに私たちの民主主義が投票にかけられました。米国の魂が危機に直面し、世界が注目していましたが、みなさんが米国に新たな1日をもたらしたのです。

 たぐいまれなチームだった私たちの陣営スタッフやボランティアのみなさん。かつてないほど多くの人々を民主主義のプロセスに巻き込み、この勝利を可能なものにしてくれました。ありがとうございました。全ての票を確実に集計するため、たゆみなく働いてくれた投票所のスタッフや選挙管理者の皆さん。あなた方のおかげで民主主義の高潔さが守られたことを、私たちは感謝しています。

 そして私たちの美しい国を作り上げている米国民の皆さん。あなた方の声を届けるために、記録的な数字で投票をしてくれて、ありがとうございました。

 これまで、特にこの数カ月間は困難な時期でした。悲しみや不幸、痛み、不安や苦労がありました。しかし、私たちはあなたたちの勇気や回復する力、そして精神の寛大さも目にしました。

 この4年間、あなた方は平等や正義、私たちの生命や地球のために邁進(まいしん)し、団結してきました。そして、皆さんは票を投じ、明確なメッセージを届けてくれました。あなたがたは希望、結束、品位、科学(への信頼)、そして何より、真実を選びました。

 あなたがたはジョー・バイデンを米国の次期大統領に選んだのです。ジョーは癒やす人であり、結束をもたらす人です。信頼できる確かな手腕があります。彼自身の喪失の経験は、私たちを助ける目的意識を彼に持たせ、彼は私たち国民に目標を見いださせてくれる人です。条件なしで愛する大きなハートの持ち主です。すばらしいファーストレディーになるであろうジルや(次男の)ハンター、(次女の)アシュリーを愛し、孫たちや家族全員を愛しています。私がジョーを初めて知ったのは副大統領としてでしたが、本当によく知るようになったのは、私たちが今日こうして覚えている、親愛なる友人のボー(5年前に他界したバイデン氏の長男)を愛していた父親としてでした。

 私の夫ダグラス、子どものコールとエラ、妹のマヤ、そして私の家族全員へ。私は、表現しきれないほどにみんなを愛しています。私の家族をこんなに素晴らしい旅に招き入れてくれて、私たちはジョーとジルにとても感謝しています。そして今日の私という存在にとって、最も重要な女性がいます。いつも私たちの心の中にいる私の母シャマラ・ゴパラン・ハリスです。

 彼女は19歳でインドから米国に来ましたが、おそらくこの瞬間を想像もしなかったでしょう。でも、彼女はこういった瞬間が起こりうる米国を、とても深く信じていました。私は母のことを考えています。そして黒人、アジア人、白人、中南米系、先住民の数世代にわたる女性たちのことを考えています。彼女たちは、我々の国民の歴史の中でずっと、今夜のこの瞬間を実現するための道のりを築いてくれました。彼女たちは、全ての人の平等、自由、正義のために懸命に闘い、犠牲となってきました。そんな女性たちの中には、あまりにも頻繁に見過ごされてきましたが、たびたび民主主義の支柱であることも示してきた黒人女性たちも含まれています。投票の権利を確保し、それを守るために1世紀以上にわたって努力してきた全ての女性たちのことを私は考えています。100年前に合衆国憲法修正19条を、55年前には投票権法を勝ち取り、そして2020年の今、この国には、投票して意見を届けるという基本的な権利のために闘い続ける新たな世代の女性たちがいます。

 今夜、私は彼女たちの闘いや決断、そして確かな見通しについて思い起こしています。彼女たちは、それまでどうだったかに縛られず、どうなり得るかに目を向けていたのです。私は彼女たちの偉業の上にあります。ジョーが米国に存在する最も大きな障壁の一つを打ち破る大胆さを持ち合わせているということは確かなことです。私を女性初の副大統領に選んだのですから。

 私は初の女性副大統領になりますが、最後の女性副大統領にはならないでしょう。なぜなら今夜、ここが可能性に満ちあふれた国だということを、全ての少女たちが目の当たりにしているからです。そして、私たちの国は、性別に関係なく、はっきりとしたメッセージを子どもたちに送りました。大きな夢を持ってほしい。信念を持って先頭に立ってほしい。そして、他の人たちが、単に見たことがないという理由だけでしないであろう方法で、あなたたち自身を見てほしい。でも、全ての段階で私たちがあなたに拍手を送るということを知っておいてほしいのです。

 そして、アメリカの皆さん。誰に投票したかにかかわらず、私はジョーのような副大統領になるように努力します。彼がオバマ大統領(当時)に対してそうだったように、忠実かつ誠実で、周到に準備をし、毎朝目覚めたら、皆さんと皆さんの家族のことを考えるような副大統領になります。

 これから本当の仕事が始まります。大変な仕事です。必要な仕事です。素晴らしい仕事です。命を救い、この(新型コロナウイルスの)パンデミックに打ち勝つために必要不可欠な仕事です。働く人たちの役に立つように経済を立て直します。私たちの司法制度と社会にある構造的な人種差別を根絶させます。気候変動と闘います。国を結束させ、私たちの国の魂を癒やします。

 目の前にある道のりはたやすいものではないでしょう。しかし、米国は準備ができています。ジョーと私もです。

 私たちは、私たちの最も良いところを代表する大統領を選びました。世界中が敬意を払い、私たちの子どもたちが尊敬できる指導者です。私たちの軍隊に敬意を払い、国の安全を維持する最高司令官です。そして、全ての米国民のための大統領です。

 次期米国大統領のジョー・バイデンを紹介できるのは光栄の至りです。