【ワシントン時事】米大統領選の結果をめぐり論争が続く米国で、共和党のトランプ大統領に共鳴する新興保守メディアが急成長している。トランプ氏寄りの報道では独壇場だったFOXニュースに不満を抱く層に支持され、視聴者数がうなぎ登りだ。ただ、その報道姿勢は、陰謀論を拡散させているという批判が根強い。
「トランプ氏はFOXにとても落胆している。われわれはFOXを右から追い詰めた」。ケーブルテレビ局「ニュースマックス」の経営者でトランプ氏とも近いクリス・ラディ氏は最近、米メディアでこう胸を張った。視聴者数は大統領選前と比べ10倍以上の80万人に急増したという。
きっかけとなったのは11月3日の投票日以降のFOX報道だ。激戦州アリゾナで民主党のバイデン前副大統領の勝利確実をいち早く伝え、早々とバイデン氏を「次期大統領」と呼んだ。トランプ氏はFOXへの不満を露骨に示し、「多くの優れた代替局がある。ニュースマックスやOANN(ワンアメリカニュース)を試してみよう」と支持者に呼び掛けた。
視聴者数で全米一を誇るFOXと比べ、これら新興保守メディアは「事実へのこだわりが希薄」(CNN)という批判が強い。ニュースマックスは大統領選の勝者をいまだ認定せず、番組ではトランプ氏側の「不正」の主張を垂れ流し気味だ。OANNは、全米で使われている投票システムで「何百万のトランプ氏票が削除された」などと報じ、トランプ氏もたびたび引用してデマを拡散させたと指摘される。
トランプ氏には影響力で群を抜くFOXをけん制し、保守系メディアに対する求心力を保持する狙いがありそうだ。2024年大統領選出馬も取り沙汰される中、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は最近、トランプ氏周辺がニュースマックスの買収を検討していると報じた。