旧民主党系議員を支援してきた「全トヨタ労働組合連合会」が、与党も含め旧民主系以外との政策上の連携の強化を検討している。与党との連携は今に始まったわけではないが、連合内には「旧民主系が集う立憲民主党からの離反」と見る向きが強い。背景には共産党との連携を強める立民への不満があるようだ。
(田中一世、今仲信博、奥原慎平)
全トヨタ労連は産経新聞の取材に「われわれの政策の実現のスピード感と実効性を上げていくため、党派にこだわらない連携を検討している。選挙は念頭に置いていない」と狙いを説明した。連合幹部も支援先が与党に変わるわけではないとした上で「連合執行部が傘下労組に求めている『立民支援』ではなく、議員を個別に見極めて支援するとのメッセージだ」と語る。
9月に旧民主系が合流し、新・立民が150人規模で発足した。後押ししたのは神津里季生会長ら連合執行部で、支援先を分散させない「大きな固まり」が必要と判断したからだ。
思惑とは異なり、傘下の自動車や電力などの産業別労働組合(産別)は立民と距離を置く。立民は綱領に「原発ゼロ」を記載。共産と次期衆院選で協力する方針で、共産は「野党連合政権」の合意も求める。この姿勢は産別と相いれない。
全トヨタ労連はトヨタ自動車グループ各社の314労組(総組合員数約35万人)が加盟。愛知県を中心に強大な集票力を持ち、旧民主系議員と「連絡会」を作り選挙で支援する。だが、連絡会の議員は立民所属が多く、共産と歩調を合わせて政権批判を繰り返す姿勢に同労連関係者から苦言を呈された議員もいた。
立民の福山哲郎幹事長は同労連の動きに関し「方針転換とは受けとめていない」と語るが、立民への不満の表れともいえる。
一方、自民党では連携が選挙にまで及ぶことへの期待が高まっている。特に敏感なのが愛知県選出議員で、約10人は25日、国会内で情報交換し、同労連との連携強化に向け県連や党本部主導での関係構築を求める声が上がった。若手は「選挙の時にあの『軍団』の動きが止まるだけでも助かるのに、連携となれば本当にありがたい」と強調する。
世耕弘成参院幹事長も20日の記者会見で「われわれは基幹産業として自動車産業が発展するような政策を次々と打っている。重要な局面を迎えているわけで、労組側との意見交換はやぶさかではない」と語った。