[ロンドン 8日 ロイター] – 英国で8日、米ファイザーが独ビオンテックと共同開発した新型コロナウイルスワクチンの接種が始まった。90歳の女性のマーガレット・キーナンさんが、治験以外で世界で初めて同ワクチンの接種を受けた。

キーナンさんは8日0631GMT(日本時間午後3時31分)に、英中部コベントリーの地元の病院で接種を受けた。

キーナンさんは「時期は早いが最高の誕生日プレゼントをいただいた。今年は大半の時期を1人で過ごしてきたが、ようやく新年を家族や友人と過ごすことができる」と喜びをあらわにした。

新型コロナワクチンの一般国民への接種を開始するのは、西側諸国では英国が初めて。英国はコロナによる死者が6万1000人超と欧州で最悪の状況に見舞われている。

ワクチン接種は2回に分けて受けるが、1回目の接種後、2回目の接種を受けるまで3週間、間を置く必要がある。また、予防接種によってウイルスの感染が抑えられるという保証もない。

ジョンソン首相は「ワクチンが徐々に大きな違いをもたらすことは間違いないが、『徐々に』という点を強調しておきたい。われわれはまだウイルスを根絶していない」と述べ、注意を促した。

ハンコック保健相は、ワクチン接種を開始したこの日を「Vデー」と名付け、年末までに何百万人もの人々がワクチン接種を受けられると表明。同時に、最も脆弱な人々への接種を優先し、少なくとも春までは社会的距離の確保といった予防対策を徹底してほしいと呼び掛けた。

英国はこれまでに2000万人分のファイザー製ワクチンを発注。介護施設の住民や介護者、80歳以上の高齢者、一部の医療従事者などを対象に、約80万回分のワクチンが最初の1週間で提供される予定だ。

英国の面積は比較的小さくインフラも整っているが、ファイザー製ワクチンは通常の冷蔵庫で5日間しか保存できず、ワクチンを配布する際に生ずる物流上の課題が難点となる。

一方、英製薬大手アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したワクチンは、安価であることに加えて通常の冷蔵庫の温度で輸送できることから、発展途上国中心に実用化への期待が高まっている。同ワクチンは、後期臨床試験(治験)でこれまでに70%程度の予防効果が確認された。政府の首席科学顧問を務めるパトリック・バランス氏は、保存や配布が容易なワクチンが重要な役割を果たすと指摘した。

こうした中、世界保健機関(WHO)の幹部であるマーガレット・ハリス氏は、コロナ感染の新たな急増を抑えることができるのは公衆衛生措置であってワクチンではないと強調。「ワクチンは素晴らしい手段であり非常に役立つだろうが、ある種の免疫バリアを提供するという意味でのワクチン効果はまだまだだ」と述べた。