[ワシントン/北京 6日 ロイター] – トランプ米大統領は5日、中国の金融会社アント・グループの電子決済サービス「アリペイ」を含む8つの中国系アプリとの取引を禁止する大統領令に署名した。ホワイトハウスが発表した。
米高官によると、多くのユーザーを抱え、個人情報にアクセスできる中国系アプリが米国民にもたらす脅威に対応するための措置という。
大統領令についてはロイターが最初に報じた。
大統領令では、国家の安全保障を守るため、米国が中国のアプリ開発業者に対して「積極的な措置」を講じる必要があると表明。
「中国のソフトはスマートフォンやタブレット、コンピューターなどの個人用電子機器にアクセスすることで、ユーザーの個人情報や機密情報を含む膨大な量の情報を取得することが可能」とし、こうしたデータ収集を通じて「中国は連邦政府の職員や請負業者の位置を追跡し、個人情報の記録を構築することができる」と指摘した。
商務省が45日以内に具体的にどの取引を禁止するか決定する。対象となるアプリはアリペイのほかに、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)のQQウォレットやウィーチャットペイ、キャムスキャナー。
SHAREit(シェアイット)、テンセントQQ、アリババ傘下のUCWebが開発したVMate(ブイメイト)や、キングソフト・オフィス・ソフトウエアのWPSオフィスも含まれる。
アリババ、テンセント、キャムスキャナー、シェアイット、ワシントンの中国大使館などのコメントは現時点で得られていない。
1月20日に新政権が発足するのを前に、トランプ氏は対中強硬姿勢を一段と強めている。一方、バイデン氏は就任初日にこの大統領令を無効にすることも可能。
政府高官によると、商務省は禁止する取引を特定するために政権交代前に動く計画という。
ロス商務長官は声明で、トランプ氏による「米国民のプライバシーや安全を中国共産党の脅威から守ろうとする取り組み」を支持すると表明した。
中国外務省の華春瑩報道官は6日の会見で、中国企業の正当な権利を守るため必要な措置を講じると表明。また中国商務省は、米国の方針が公正な競争に反するほか、アプリを使った非接触型決済は新型コロナウイルスの流行で世間に広く浸透しており、中国ばかりでなく米国の顧客や企業にとっても利益が損なわれるとウェブサイトで批判した。
調査会社センサータワーによると、アリペイのアプリは昨年、米国のアップルやグーグルのストアで約21万回ダウンロードされた。キャムスキャナーは440万回、WPSオフィスは約56万回ダウンロードされている。