[ワシントン 8日 ロイター] – 米労働省が8日に発表した2020年12月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比14万人減少し、8カ月ぶりに悪化に転じた。国内でなお猛威を振るう新型コロナウイルスにより、パンデミック(世界的大流行)禍からの回復が一時的に失速する可能性を示唆した。
市場予想は7万7000人の増加だった。前月の非農業部門雇用者数は24万5000人増から33万6000人増に上方改定された。
業種別では、娯楽・宿泊が49万8000人減少。バーやレストランなど飲食の落ち込み(37万2000人減)が響いた。教育、政府関連も縮小した。一方、小売りは12万1000人、製造は3万8000人、建設は5万1000人それぞれ増加するなど、業種によって明暗が分かれた。
店舗閉鎖などコロナ禍の影響で働けない人は約1580万人で、前月の1480万人から増加。恒久的に職を失った人は337万人と34万8000人減少し、10年12月以来の大幅な改善を示す一方、6週間以上職がない人はなお400万人近くおり、失業者全体の4割近くを占める。
失業率は6.7%と横ばい。市場予想は6.8%だった。ただ、コロナ禍で発生した「雇用されているが休職中」の人の扱いが引き続きデータのゆがみとなっている可能性がある。このゆがみがなければ、失業率は約7.3%だった。
現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6)は、前月の12.0%から11.7%に改善した。
昨年末には9000億ドルの追加コロナ経済対策法が成立したばかり。今月5日に行われたジョージア州の連邦上院選決選投票では民主党候補2人が勝利し、民主党が上下両院で主導権を握ることから、今後さらなる景気対策が打ち出される見込みだ。また、バイデン次期政権の下でコロナワクチンの普及が加速するとの期待もくすぶる。
FHNフィナンシャルのチーフエコノミスト、クリス・ロウ氏は、雇用の減少で「景気回復が一時停止したり、完全に失速するわけではない」と指摘。ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏も「米経済は今後数カ月にわたり軟調に推移するだろうが、財政支援とワクチンにより夏までには景気が上向くはずだ」と述べた。
一方、オックスフォード・エコノミクスの米国担当シニアエコノミスト、リディア・バウサー氏は、コロナ禍による傷が癒えるまでには時間を要するため、「景気回復に対する下振れリスクは根強く、失業率が長期的に高止まったり、労働市場の定着が何年も弱まる恐れがある」と指摘した。
労働参加率は0.2%ポイント低下し61.5%。女性の参加率が低下した。今回の景気後退では、女性が仕事に就く割合が高い業種への影響が大きい。人口に占める雇用者の比率は57.4%だった。
時間当たりの平均賃金の伸びは前月比0.8%と、前月の0.3%から拡大。前年同月比では5.1%伸びた。労働時間は週平均で34.7時間と、前月の34.8時間から縮小した。