【北京時事】中国が育成を急ぐ国産半導体に逆風が吹いている。2025年の「製造強国」入りを視野に半導体の自給率向上を掲げるが、米国による制裁の影響で目標達成は困難な状況。補助金や優遇税制を柱とする支援策は過剰な参入を招くなど、弊害も目立つ。

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 中国政府は15年公表のハイテク産業育成戦略「中国製造2025」で、半導体自給率を20年に40%、25年に70%まで高める目標を設定。ただ、米調査会社ICインサイツによると、20年は15.9%にとどまった。25年も19.4%と目標に遠く及ばない見込みだ。

 背景には米中のハイテク覇権争いがある。半導体の中核技術を握る米国は19年以降、半導体設計をリードしてきた華為技術(ファーウェイ)や製造最大手の中芯国際集成電路製造(SMIC)を狙い撃ちにした制裁を実施、中国の半導体産業は大きな痛手を受けた。

 半導体の生産工程は設計、製造、組み立て・検査に大別され、中国は特に製造が弱いとされる。税関総署の統計では、20年の半導体貿易額は過去最大となる2334億ドル(約24兆6000億円)の赤字を記録した。

 中国の半導体産業は「いまだに強い国際競争力を獲得できていない」(邦銀アナリスト)と指摘される。政府系シンクタンクも主要国より3~5年は遅れていると認める。

 政府は外圧をチャンスに変えるべく、サプライチェーン(部品供給網)を含めた業界全体の底上げを目指す。20年夏には企業所得税(法人税)の最長10年間免除などの支援策を公表。香港紙によれば、同年1~8月に前年同期の2.2倍に当たる約9300社が新規参入した。

 ただ、大半は専門外からの進出で、実力は未知数だ。巨額の補助金を受けていた紫光集団が経営難に陥るなど、実績のある大手にとっても競争は激しい。香港紙は、約60年前に大失敗に終わった農・工業の大増産政策「大躍進」の二の舞いになりかねないと警鐘を鳴らす。