新年度を迎える4月から、暮らしに関わるサービスや仕組みが変わる。商品やサービスの価格を表示する際、消費税を含んだ「総額」を示すことが義務づけられる。公的年金は支給額が下がり、介護や障害福祉のサービス料金は上がる。
消費税の総額表示は消費税率が5%だった2004年に義務づけられたが、その後の段階的な税率引き上げを見越し、13年秋から「本体○○円+税」といった表示を一時的な措置として認めてきた。この4月以降、税抜きの価格との併記も認められるが、政府は税込み価格を著しく小さくするといった表示はしないよう求めている。
コロナ禍で経済が低迷する中、年金受給者の収入が減る。公的年金は国民年金、厚生年金ともに月々の支給額が引き下げられる。6月支給分から反映される。現役世代の賃金水準の低下に合わせて年金支給額を抑える新ルールが適用されたためで、17年度以来4年ぶりの引き下げだ。
介護や福祉サービスの料金は値上げされる。介護保険サービスは0・7%、障害福祉サービスは0・61%引き上げられ、利用者は負担増となる。65歳以上の介護保険料も多くの自治体で値上げされる。一方、医療分野では薬価が初めて毎年改定されるようになり、この春は医薬品の7割の品目の薬価が引き下げられる。その分、患者の負担は軽減される。
原材料価格の上昇を背景に、一部の食品も値上がりする。食用油は日清オイリオグループが1キロあたり20円以上、J―オイルミルズは同30円以上値上げする。昨年、記録的な不漁に見舞われたサンマの缶詰も、大手マルハニチロが値上げする。
労働分野ではこの春、大きな制度の見直しがある。企業は70歳まで働く機会を確保することが努力義務になる。現在は企業に対し、定年廃止、定年延長、再雇用などの継続雇用といった対応をとって従業員が65歳まで働ける機会をつくるよう義務づけている。4月以降は、希望する従業員が70歳まで働けるようにする努力義務が加わる。新たに、個人事業主として業務委託契約を結ぶ、有償ボランティアとして携わってもらうといった雇用以外の選択肢も可能になる。
「同一労働同一賃金」の原則は、正社員と仕事が同じなら、非正社員にも同じ賃金や手当を支払うべきだという考え方で、昨年4月に大企業に適用されたのに続き、この4月から中小企業にも適用される。法律の指針では、通勤手当や深夜・休日手当、社員食堂の利用、慶弔休暇や病気休職などは原則、差をつけることは認められない、としている。
フリーランスとして働く人のセーフティーネットを広げるため、個人事業主が労災保険に特別加入できる制度の対象に、俳優など芸能従事者・アニメーター・柔道整復師などの業種が加わる。特別加入は任意で、業種ごとに作られる「特別加入団体」に申し込んで保険料を払えば、労災時に保険給付を受けられる。
政府や自治体による子育て支援に課税される問題が是正される。産後ケア事業の利用料は消費税が非課税になり、ベビーシッター利用への助成は所得税が課税されなくなる。
有名企業の社名変更もある。4月から、ソニーは「ソニーグループ」に、楽天は「楽天グループ」に変わる。