新型コロナウイルスの変異株が関西圏で猛威を振るう中、緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置」が東京、京都、沖縄の3都県に適用されることが9日、決まった。これにより対象地域は6都府県に拡大するが、果たしてどこまで抑え込めるのか。

 「変異株の脅威を強く感じている」。新型コロナ対策を担当する西村康稔経済再生相は9日の衆院議院運営委員会でそんな認識を示した。そのうえで「東京や京都は、まだ必ずしもステージ3から4に行く状況ではないが、急速に感染拡大する恐れがあるため、重点措置で抑え込む判断をした」と述べた。

 一方、菅義偉首相は9日夜、首相官邸で記者団の取材に応じた。重点措置適用後も感染拡大が続いた場合、3度目の緊急事態宣言を検討するか問われたが、「宣言に至らないように罰則を適用できる重点措置を講じた。徹底して警戒しながら対策を打っていきたい」と述べるにとどめた。

 政府は、重症化しやすい高齢者向けのワクチン接種が進む夏ごろまで、重点措置を「機動的、集中的に」(首相)使うことで、感染の拡大を抑え込みたい考えだ。その先にある夏の東京五輪・パラリンピックを見据え、「感染爆発」のインパクトを伴う3度目の緊急事態宣言は避けたいとの思惑もある。閣僚の一人は「重点措置をやって、やめての繰り返しでいい。それだったら五輪もできる」と話す。

ワクチンの福音と、変異株の脅威と

 一方、専門家らの変異株に対する警戒は強まっている。政府分科会の尾身茂会長は8日夜の会見で、「ワクチンという『福音』と同時に、変異株という悪いニュースが来ている。非常に難しい状況に来ている」と指摘した。政府は、変異株の監視体制を強化するため、陽性者全体に実施するスクリーニング検査を40%まで引き上げるとしているが、7日公表の速報値では、全国平均で32%、東京では23%にとどまる。

 変異株への抜本的な対策が求められるなか、政府が9日、基本的対処方針に新たに加えたのは、変異株による感染が拡大している関西を念頭に「不要不急の都道府県間の移動は極力控えるように促す」のみ。感染力が強いとされる変異株の脅威を前に、官邸内からは「変異株は実体がよくわからない。今はとりあえず重点措置でたたくしかない」(幹部)との本音も漏れる。

 尾身氏は、同日の衆院厚労委員会でも警鐘を鳴らし続けた。「重点措置の効果がなければ感染は増えてステージ4に近づく。その場合、緊急事態宣言を考慮するのは当然だ」(西村圭史)

まん延防止等重点措置の対象地域と期間

東京都 23区、立川市、八王子市、武蔵野市、府中市、調布市、町田市=4月12日~5月11日

京都府 京都市=4月12日~5月5日

沖縄県 那覇市、名護市、うるま市、沖縄市、宜野湾市、浦添市、豊見城市、糸満市、南城市=4月12日~5月5日