菅政権にとって初の国政選挙となった参院広島選挙区再選挙と参院長野選挙区補欠選挙、衆院北海道2区補選が25日投開票され、自民党は与野党対決となった広島と長野でいずれも敗れた。候補者擁立を見送った北海道を含め、「全敗」という結果に終わり、今後の政権運営に大きな打撃となった。一方、「共闘」路線で臨んだ野党側は、今回の勝利を次期衆院選に向けた弾みにしたい考えだ。
広島再選挙は、野党が候補者を一本化した諸派「結集ひろしま」新顔で元キャスターの宮口治子氏(45)=立憲、国民、社民推薦=が、自民新顔で元経済産業省官僚の西田英範氏(39)=公明推薦=ら5人を破った。公職選挙法違反(買収)の有罪判決が確定した河井案里氏=自民を離党=の当選無効に伴うもの。「政治とカネ」の問題が大きな争点となった。
野党は今回の3選挙について、「政権選択選挙につなげたい」(立憲の枝野幸男代表)との意気込みで臨んだ。とりわけ広島再選挙に注力し、河井夫妻の事件については「金権政治」との批判を強めた。
一方、与党は自民党幹部らが企業や団体を回るなどの選挙戦を展開し、公明も複数の幹部が応援に入るなど総力を結集したが、支持層を固め切れず、逆風をはね返せなかった。
長野補選は、野党統一候補として立った立憲新顔の羽田次郎氏(51)=共産、国民、社民推薦=が、自民新顔で元衆院議員の小松裕氏(59)=公明推薦=ら2人を破った。立憲の参院幹事長だった羽田雄一郎氏が新型コロナに感染して急逝したことに伴うもので、実弟の次郎氏を立てた野党が「弔い選挙」を前面に掲げた。
北海道2区補選は、野党統一候補として立候補した立憲前職の松木謙公氏(62)=国民、社民、共産道委員会推薦=が、維新の新顔ら5人を破り、国政に返り咲いた。選挙は収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農林水産相=自民を離党=の議員辞職に伴うものだった。
3選挙について与党側は「最低1勝」をめざし、野党に長年苦戦してきた長野より、支持基盤の厚い広島での勝利に期待していた。全敗という結果に、与党内には動揺が広がっており、次期衆院選を控え、菅義偉首相の政権運営の求心力が低下する可能性がある。首相の衆院解散戦略にも影響を与えそうだ。
野党は勢いづいており、6月の国会会期末に向け、政権追及を強める構えだ。
投票率は衆院北海道2区補選が30・46%、参院長野選挙区補選が44・40%、参院広島選挙区再選挙が33・61%だった。(楢崎貴司)