- 就任後の出席した全ての会議で女性管理職1人も見ず-ギルソン社長
- 政府が女性活躍推進も日本のジェンダーランキングは156カ国中120位
三菱ケミカルホールディングス(HD)のジョンマーク・ギルソン(57)新社長兼最高経営責任者(CEO)はインタビューで、女性管理職の比率を大幅に引き上げる考えを示した。
食品原料などを手掛ける仏ロケットのCEOを務めていたギルソン氏は4月1日に三菱ケミカルHDの社長に就任。国内最大の総合化学メーカーのトップに社外から異例に抜てきされた同氏は就任後、同社の女性幹部の少なさに驚いたという。
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ギルソン氏は19日に行われたインタビューで、「これまで25から40の会議に出席したが、管理職の女性は1人として見なかった」と語った。三菱ケミカルHDの中核事業会社である三菱ケミカルの女性管理職比率は6.7%。男女共同参画白書によると、2019年の日本国内の企業の管理的職業従事者に占める女性の割合は14.8%だった。
欧米主要国の同比率は3-4割に達しており、白書は「諸外国と比べると依然として際だって低い水準」と評価している。日本では安倍晋三前政権が13年に成長戦略の柱の一つとして女性活躍の推進を打ち出したが、これまで期待されていたほどの成果は出ていない。
世界経済フォーラム(WEF)の最新の「ジェンダーギャップ指数」のランキングでは日本は156カ国中120位で、13年の136カ国中105位から順位を下げている。女性登用の遅れを背景に、政府は昨年、20年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%にするとしていた目標の達成時期を「20年代の可能な限り早期」に先送りした。
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ギルソン氏は、国際的に低い女性比率の改善に向け同じ能力の男女の候補者がいる際には女性を優先的に登用するといった取り組みが必要との考えを示した。また、女性登用の拡大はトップの介入がなければ掛け声倒れに終わるとし、自らも積極的に候補者の選定などに関与していくと語った。その上で「昇進に値しない人を昇進させることは決してしない。しかし選択肢があるのならば、われわれはもう少しバランスを取り戻す必要がある」と強調した。
一方、三菱ケミカルHDはギブソン氏の社長就任前の2月に発表した中期経営計画で、資本効率などを踏まえた事業ポートフォリオの改革を行うとの方針を打ち出しており、実行を担うギルソン氏の手腕が試されることになる。
SMBC日興証券の宮本剛シニアアナリストは3月のリポートで、ギルソン氏が最優先課題として収益性の改善を挙げていることから、利益率の低い事業は再編対象となりやすいと指摘。石油化学と炭素の2事業は温室効果ガスの排出量の多さと差別化の難しさから評価されにくく「構造改革が進展しやすい」と分析した。
ギルソン氏は、脱炭素化に向けた流れや事業の成長性と収益性などを踏まえると時間の経過と共に石化事業がポートフォリオ再編の対象になるとの見通しを示した。三菱ケミカルHDの石油化学事業の20年3月期のコア営業損益は21億円の赤字で、21年3月期も65億円の赤字見通しとなっている。
商品市況の回復に伴って「今後数年間にわたって利益が得られるのならば、それは素晴らしいことだ。しかし将来を見れば、これらはわれわれが見据える成長の方向ではない」と話した。