テニスの4大大会第2戦、全仏オープンに出場していた大坂なおみ(日清食品)が5月31日、大会を棄権した。記者会見を拒んだことが想定外の騒動に発展。大会や他の選手にこれ以上の迷惑をかけたくないと考えて、決めたという。突然の発表に揺れるなか、大坂を気づかう選手が相次いだ。

 女子シングルスで4大大会通算23勝を目指しているセリーナ・ウィリアムズ(米)は、「なおみの気持ちはとても分かる。できることなら彼女をハグしてあげたい」と気づかった。会見直前に、大坂の棄権を知ったという。

 女子テニス界のレジェンドも、昔は会見を苦手にしていた。「(過去に不安に感じたことは)たくさん、たくさんあった。その瞬間を迎えるのがとても難しい時もあった。でも、それが私を強くしてくれた」

 今回の騒動への是非については、意見を避けた。ただ「人はそれぞれ性格が異なるし、誰もが一緒ではない。物事への対応は人それぞれだと思う。いま言えることは、彼女ができると考える最善の形で、やりたいようにやらせるべきだ。彼女はできる限りのことをやっているとも思う」と話した。

 昨年の全仏で準優勝した22歳のソフィア・ケニン(米)も、会見直前に大坂の棄権を知った。詳細が分からないため多くは語らなかったが、「彼女の判断を尊重したい」と話した。

 選手にのしかかる重圧やそれを乗り越える作業の難しさは、ケニンも痛感している。「スポンサーなど周囲から期待がすごく寄せられる。どうにかしてやっていくしかない」。そのためには何でも相談でき、支えてくれるチームが周りに必要と説明する。

 男子シングルス1回戦で、ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)に勝利した西岡良仁(ミキハウス)も大坂を思いやった。試合後の会見で「なおみちゃんの棄権はすごく悲しいです。日本人の活躍を待っている方がたくさんいたと思う。苦しい中でも、なおみちゃんの戦っている姿は見たかった」と語った。

 大坂が人種差別問題などに対して積極的に行動し、声を上げている姿に、西岡は尊敬しているとも明かす。「なかなかこうやって行動していくことは大変。すごいし、尊敬に値すると思っています」。

 一方で記者会見の拒否については、再考の余地があったと私見を述べた。「(会見に出た上で)そこで彼女が答えたくないか、答えるかをちゃんと判断すればいい問題だったのかなと思う。やろうとしていることは正しかったと思いますけど、少し手順を急ぎすぎたのかな」(ロンドン=遠田寛生)