【パリ時事】テニスの全仏オープンに出場していた大坂なおみ選手(日清食品)が女子シングルス2回戦を棄権すると自身のツイッターで明らかにした。四大大会で4度優勝したトップ選手がうつの症状を告白したことは、テニス界のみならず多くの人に衝撃を持って受け止められた。
力強いショットを武器に勝利を重ねるプレースタイルと、小さな声で恥ずかしそうに受け答えするインタビュー。そのギャップが大坂選手の魅力の一つで、ツイッターとインスタグラムのフォロワーは合計330万人を超え、世界中のファンから愛されている。
そんな人気者が突然、全仏オープン開幕前に記者会見に応じないと表明し、テニス界が大騒ぎになった。会見を拒否した場合に罰金を科す規則に異議を唱え、SNSに「選手の心の健康を考慮していない」などと投稿。ただ、真意ははっきりせず、大会開催に水を差す形にもなり、理解に苦しむ選手もいた。
5月30日のシングルス1回戦後、大坂選手は記者会見に応じず、罰金1万5000ドル(約164万円)を科された。違反を重ねた場合は大会からの追放や、四大大会出場停止の可能性もあるという緊急事態。その後、ツイッターに「怒りは理解の欠如」などとつづり、反発の意思を示したとも受け取られた。
一夜明けた31日、再びSNSに投稿したメッセージが衝撃的だった。「(四大大会で初優勝した)2018年全米オープン以来、うつの症状に苦しみ、対応に苦労していた。少しコートから離れるつもり」
あの優勝で人生が変わり、注目度は一気に上がった。人種差別問題にも積極的に発言する新時代のスターとして、ファッション雑誌の表紙を飾るなど、活躍はスポーツ界にとどまらない。現在の年収はあらゆる競技を含めた女子選手でトップの5520万ドル(約60億円)と報じられた。
人知れぬ重圧。社会的な存在の大きさに、23歳の心がついていけなかったのかもしれない。メッセージの最後に「また会いましょう」と記した大坂選手。まずはじっくりと回復に努めるべきだろう。