【シドニー時事】オーストラリア政府は19日、同国産ワインに対して中国が導入した高率の関税を不当として、世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。豪州は大麦に対する高率関税問題でも中国をWTOに提訴済みで、両国間の貿易摩擦が激化した。
豪州で対中観が悪化 コロナ禍や貿易摩擦受け―シドニー工科大調査
中国は昨年11月、豪州産ワインが不当に安く輸入されているとして、最大200%を超える関税を上乗せした。これを受けて豪州産ワインの対中輸出は大きな打撃を受け、豪政府機関によると、今年3月までの4カ月間で前年同期比96%減少した。
豪州のテハン貿易相とリトルプラウド農業相は連名で声明を出し、「政府は立場の違いを解決するために、WTOで確立された制度を使って豪州ワインメーカーの利益を引き続きしっかりと守る」と強調した。
WTOの紛争処理手続きに基づき、まず2国間で協議。60日以内に解決できなければ、豪州は裁判の一審に相当する紛争処理小委員会(パネル)の設置を求める見通しだ。
中国は、新型コロナウイルスの発生源をめぐって独立した調査を求めた豪州に反発。豪州にとって最大の貿易相手国の立場を利用して圧力を高めようと、ワインと大麦のほか、牛肉や石炭など豪州の主産品に対して事実上の貿易制裁に乗り出した。大麦をめぐるWTO紛争では、5月下旬にパネル設置が決まっている。