盤石とみられていた世界王者に「まさか」が訪れた。世界ランキング1位の桃田が38位の韓国選手にストレートで屈する波乱。得意のヘアピンがネットにかかり、敗北が決まった。「ああ、終わってしまったな」。初の五輪の舞台は1次リーグ2試合で幕。コートにしゃがみこみ、ショックを隠せない様子だった。

【特設】東京五輪・バドミントン

 順調にリードを奪っていた第1ゲーム途中で異変が起きた。本来なら相手のコート奥に返すショットが浅くなり、許※熙(※ニンベンに光)に高い打点から強打を浴び続けた。「気持ちで押されてしまった。余裕がなくてプレーが縮こまってしまった」と振り返る。

 第1ゲームを落として立て直しを図ったが、揺らいだ自信はついに取り戻せなかった。「狙われているのは分かっていた」のに、つなぎのショットが甘く入って強烈なスマッシュを許した。「相手が決めにくるのをしっかり返して、長い試合に持っていくのが自分のスタイル」。そう話していた通りの卓越した「ラリー力」はそこになかった。

 メダル候補だった2016年リオデジャネイロ五輪は、違法賭博関与が発覚して自ら出場の道を閉ざした。昨年は交通事故で右眼窩(がんか)底を骨折福島県内の高校生だった10年前には東日本大震災も経験した多くの苦難を乗り越えてたどり着いた「憧れの舞台」(桃田)で、支えてくれた人たちに感謝の気持ちを示すつもりだった。「負けたくない、勝ちたい気持ちが強過ぎて、空回りしてしまったところもある。まだ緊張感を味わいたかった」。声を詰まらせ、東京五輪の主役候補の夏が終わった。