【ソウル時事】来年3月の韓国大統領選をめぐり、最大野党「国民の力」に入党した保守系支持率トップの尹錫悦前検事総長と李俊錫党代表との摩擦が激しくなっている。尹氏と他候補を競わせて予備選を盛り上げたい李代表に尹氏陣営が反発。追撃したい他候補は尹氏へのけん制を強めている。

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 11月上旬に党の大統領候補を選出する国民の力に対し、日程が1カ月早い与党「共に民主党」の予備選レースは既に本格化している。このため、李代表は国民の関心を与党から奪おうと、7月末から候補を集めた懇談会などの行事を次々と企画。8月18日には政策討論会も計画している。しかし、7月30日に入党した尹氏は日程の都合などで行事を欠席し、討論会出席にも難色を示している。

 反文在寅政権の象徴として人気だった尹氏は6月末に出馬表明したが、「貧しい人は低品質の食品を選べるようにすべきだ」といった失言を重ね、支持率が下降気味。政治経験を持たず準備不足も否めないだけに、他候補と同じ土俵に上がるのはできるだけ遅らせたいというのが本音とみられる。

 尹氏に近い重鎮議員が「首位」を走る尹氏をイルカに例え、「イワシ、サバ、イルカは成長する条件が違う」と「特別扱い」を要求したのに対し、李代表は「サバやイワシにも公正に機会を与える」と反論。李代表への反発の声が強まり、険悪な雰囲気が漂っている。

 12日に発表された「リアルメーター」の調査では、尹氏の支持率は約26%で、他候補は1桁にとどまった。だが、予備選の候補者届け出は今月末で、レースの本格化はこれから。前回大統領選にも出馬した洪準杓元自由韓国党(国民の力の前身)代表や劉承※(※日ヘンに文)元セヌリ党(同)院内代表らベテラン候補は、討論を通じ尹氏の政策への理解不足を浮き彫りにし、自らをアピールしたい考えとみられる。

 洪氏は「毎日の失言で党の支持率まで下げている」と尹氏を批判。劉氏陣営幹部も「討論がそんなに怖いなら、大統領選に出ること自体無理なのではないか」と挑発している。