樹齢50年前後のヒノキやスギが広がり、さわやかな風が吹く岐阜県東白川村。森林を区切り、キャンプ客のために年間契約で貸し出すサービスを編み出した。

 林業・製材会社の3代目。きっかけはキャンプ用に山を買う人がいると知ったことだ。でも放っておかれれば地元が迷惑する。ならば「山を貸そう」と思いついた。

 昨年11月に自社の林で17区画を「半信半疑で」募集すると、東海や近畿から440件もの応募があった。今は57区画に広げた。植林から伐採まで数十年かかる林業に比べ、森林レンタルは毎年一定の収入が見込め「大いなる副業」として期待できる。

 1区画300坪の使用料は年6万6千円。水道や電源はなく仮設トイレがあるだけだ。一方で太さ15センチ以下の木は切ってよく、たき火もできる。テントだけでは飽き足らず、丸太で作業小屋や橋をこしらえ、ドラム缶風呂を据え付ける人もいる。自由度は高い。

 山主はごみの放置や火の不始末を心配し、レジャー利用をあまり歓迎してこなかった。そこでまずは多少のリスクはあっても森林を開放し、「使ってもらうなかでルールやモラルが醸成され、山主の理解が進めば」と願う。

 過疎化が進む村で森林レンタルは貴重な集客拠点。他地域への展開も視野にある。「森林資源をもっと活用し、豊かな田舎をつくりたい」

 (文・写真 清水康志)

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 たぐちふさくに(44歳)