北朝鮮の金正恩総書記が別人のように変貌したと言われている。9月9日に行われた建国73周年の閲兵式に、金正恩氏はグレーのスーツ姿で登場。以前と比べるとかなりスリムになったが、報道写真を見る限り、減った体重は10kgから20kg程度ぐらいだろう。
ただし、金正恩氏が「激痩せ」したのは今年の5月から6月の間である。5月までは130kgから140kgと推定されていた。1ヶ月間の空白を置いた6月の登場時には、明らかにスリムになっていた。激痩せの理由については、筆者はプチダイエットと見ていたが、コロナワクチンの副反応の影響という説もある。
金正恩氏が別人のように変化したことから、ネットを中心に「金正恩影武者説」などが流れている。しかし公開された映像や報道写真を検証すれば、閲兵式に登場したのが金正恩氏本人であることは間違いない。それでも別人に見えるのには、激痩せ以外に理由があった。ヘアスタイルが大きく変わったのだ。
2010年の初登場以来、金正恩氏はサイドを高く刈り上げる「覇気ヘア」を貫いてきた。北朝鮮では金日成氏、正日氏と最高指導者の服装やヘアスタイルを真似るのはある種の慣例で、「覇気ヘア」も青少年に半ば強制されたとされる。
金正恩氏ほどではなくても、理髪店に行くと何も言わなくても勝手に覇気ヘアにされたという。
そうかと思えば、「俺の真似するな」という指示を下し、「極太ズボンを履くな!」とブチ切れたこともあった。
金正恩氏の覇気ヘアが変わったのは8月だ。
7月30日、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)第1回指揮官・政治活動家講習会での金正恩氏は、従来通りの覇気ヘアであり、サイドが高く刈り上げられている。(下の写真)
次に9月3日に開かれた朝鮮労働党の会議に参加した金正恩氏を見てほしい。
金正恩氏「覇気ヘア」の最大の特徴だった刈り上げがほぼなくなった。
ちなみ下の写真は、2015年に公開されたものだ。この髪型は一時、「黒電話ヘア」と呼ばれ国際的な「ネタ」になっていた。ご丁寧に眉毛まで切りそろえている。
これら3枚を比べると、2015年と現在とでは大きな変化があったことがわかる。それにしても、今より6歳も若かった頃の金正恩氏は、何を手本に「黒電話ヘア」を選択したのだろうか。そして、2012年末の権力継承から、極端な「黒電話ヘア」に至る期間は、金正恩氏が公開処刑に血道を上げた時期でもある。
(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー)
もしかしたらここにこそ、危険な独裁者の精神世界を読み解くカギがあるかもしれない。
話を現在に戻そう。今回の閲兵式に登場した金正恩氏の体型とヘアスタイルに大幅な変化があったことから、「別人」の印象を与えたかもしれない。
ヘアスタイルの変化の理由はわからないが、以前のエッジの効いた覇気ヘアに比べると落ち着いた感じはする。2021年、金正恩氏は北朝鮮の最高指導者になって10年目となった。節目の10年を機に、より重厚な指導者のイメージを打ちだそうとしてるのかもしれない。