【シリコンバレー時事】先進的な血液検査技術の開発をうたい巨額の資金を集め、後に詐欺罪で起訴された米ベンチャー企業セラノスの共同創業者エリザベス・ホームズ被告の裁判が始まった。有罪なら最高で懲役20年。一時は「次代のスティーブ・ジョブズ」と祭り上げられた女性経営者の没落に全米が注目している。
「バルワニ氏を頼ったことが過ちの一つだった」。西部カリフォルニア州で8日審理が始まった詐欺など12件の罪を問う裁判で、弁護人は共同創業者の男性による精神的な虐待が原因だったとして、無罪を主張する考えを明らかにした。
セラノスは2013年、一滴の血液でさまざまな病気を早く、安く、正確に見つけられる技術を開発したと宣伝し、一躍有名に。メディア王ルパート・マードック氏ら著名人から資金を調達し、時価総額は一時90億ドル(約1兆円)に達した。しかし15年にウォール・ストリート・ジャーナル紙が、検査の大半を外部委託している実態を報道。投資家への虚偽説明も明るみに出て、18年に解散した。
ホームズ被告は名門スタンフォード大学を中退し19歳で起業。アップル共同創業者の故スティーブ・ジョブズ氏を意識した黒のタートルネック姿で、フォーブス誌から「自力で億万長者になった最年少の女性」に選ばれた。「時の人」の転落劇は大きな反響を呼び、ドラマ化も予定されているほどだ。
創業間もないIT企業がひしめくシリコンバレーを象徴する事件としても関心が高い。シリコンバレーには、大言壮語で募った資金で革新的な技術を実現することが肯定的に語られる文化がある。「成功するまで成功しているふりをしろ」の掛け声に象徴されてきたこうした文化が、今回の裁判で否定される可能性も指摘されている。