[上海/ロンドン 24日 ロイター] – 中国人民銀行(中央銀行)を含む中国の証券、銀行規制当局などの10機関は24日、暗号資産(仮想通貨)の取引と採掘(マイニング)を全面的に禁止すると発表した。仮想通貨に関連する活動を「違法」と位置付け、海外の取引所が中国本土向けのサービスを提供することも禁止。市場では、ビットコインなどの仮想通貨のほか、仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーン関連企業の株価が急落している。 

人民銀は声明で、仮想通貨が伝統的な通貨と同じように流通することがあってはならないとし、海外の取引所が中国本土向けのサービスを提供することも禁止すると表明。金融機関、決済会社、インターネット企業が仮想通貨の取引を手助けすることも禁止し、こうした行為のリスク監視を強化する方針を示した。

その上で「人々の財産を守り、経済・金融・社会の秩序を維持するため、仮想通貨の投機、関連する金融活動、不正行為を断固として取り締まる」と表明した。

国家発展改革委員会(発改委)は、仮想通貨のマイニング活動は中国の経済成長にほとんど貢献しない一方で、カーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)達成を阻害するとし、マイニングに必要な資金支援と電力供給を断ち切ると表明した。

発表を受けてビットコインは4万0693ドルと、9%を超えて下落。イーサとXRPも共に10%下落した。

米株式市場上場のマイニング関連銘柄も急落し、ライオット・ブロックチェーン、マラソン・デジタル、ビット・デジタルは6.3─7.5%安。仮想通貨交換業者のコインベース・グローバルは3.4%下落した。

仮想通貨ブローカー、エニグマ・セキュリティーズの調査責任者ジョセフ・エドワーズ氏は「仮想通貨市場は全体的に極めて脆弱。この種の下押し要因でパニック状態になる。仮想通貨は中国では引き続きグレーエリアに存在する」と指摘。「市場は幾分かパニック状態になっている」と述べた。

中国は5月、金融機関と決済機関による仮想通貨取引に関連するサービスの提供を禁止。これに先立ち2013年と17年にの類似の規制強化を打ち出していた。

ニューヨーク大学のウインストン・マー非常勤教授は「中国のこれまでの仮想通貨市場に対する取り締まりの中で、今回は最多の機関が関与し、最も包括的な規制の枠組みとなった」と指摘。ロンドンに本拠を置くビクワント・クリプト・エクスチェンジのジョージ・ザリア最高経営責任者(CEO)は「中国当局は、資本を巡る規制強化の政策に逆行するとして、仮想通貨市場の発展を支持しない姿勢を極めて明確に示した」と述べた。

コインシェアーズの調査部門責任者、クリストファー・ベンドキセン氏は、今回の措置のあおりを受けるのは主に中国企業になると指摘。「中国企業は年間約60億ドルのマイニング活動による収入を失う。失われた分はカザフスタン、ロシア、米国などに流れる」との見方を示した

アナリストは、中国当局は仮想通貨がデジタル人民元に対する脅威になると見なしていると指摘。米国のパット・トゥーミー上院議員(共和党)は「中国当局は経済的な自由を忌避するあまり、ここ数十年で最大の革新に自国民が参加することも容認できなくなっている」と批判した。

今回の決定で主要な仮想通貨取引所がどの程度の影響を受けるかは、現時点では不明。仮想通貨取引所大手バイナンスの広報担当者によると、同社は中国から17年以降、締め出されている。米決済大手のペイパルの広報担当者は、中国で仮想通貨に関連するサービスは提供していないとした。コインベースはコメントを控えている。