Joe Mayes
- ガソリンや食品が不足、インフレは高騰-来年景気後退に陥る恐れ
- EU離脱後のバラ色の未来は実現せず、幻滅強まりつつある
ガソリンスタンドに長蛇の列が発生している英国では、怒った運転手らが燃料を求めて争う姿も見られる。スーパーマーケットでは主要な食料品が品切れだ。暖房費の高騰で多数の世帯が毛布を余計にかぶって寒さをしのぐしかなくなるだろうと慈善団体は警告する。
今年は英国がついに欧州連合(EU)から完全に離脱し、野心的な自由貿易で将来を切り開き、自信に満ちた新しい「グローバルな英国」の恩恵を国内の労働者や企業に届ける年になるはずだった。ところが、EU離脱後の現実は思い描いたようなものでなく、幻滅が強まりつつあるようだ。
ジョンソン首相率いる与党保守党は今週、年次の党大会を開くが、同党が掲げたEUから自主決定権を取り戻すとの約束は、経済的な孤立に対する不安に圧倒されている。
複数の危機に襲われた英政府は、ガソリン輸送のトラック運転手不足を補うため軍の動員を余儀なくされた。それでもエネルギー供給の数社が破綻し、焦った個人は新型コロナウイルス感染が収束しない中で必要な品物を確保しようと躍起だ。
一方でポンドは安定した先進国通貨のようでなく、むしろ新興国通貨のような値動きだ。イングランド(英中央銀行)のベイリー総裁は今や、景気を腰折れさせずにインフレ抑制に向け金利を引き上げる方法を探るという課題を背負っている。
英国の主要経済団体、英産業連盟(CBI)はジョンソン首相に対し、供給不足と生活費の問題に対処するための緊急タスクフォースを立ち上げるよう促している。ガベカル・リサーチは、インフレ高騰を招く条件が英国ではすべて整っていると指摘し、来年には英経済がリセッション(景気後退)に陥る恐れもあると予想した。小売企業幹部らは年内に食品価格の前年比上昇率が5%に達するとみている。
CBIのカラン・ビリモリア会長は「現在の景気回復は極めてもろい状態だ」と指摘。1970年代末にストライキと物不足が当時の労働党政権を崩壊させた「『不満の冬』の再来が最悪のシナリオだ」と語った。
ブルームバーグ・エコノミクスは、英国の経済成長率が7-9月(第3四半期)に1.6%、10-12月には1.3%に減速すると見込む。それでも通年では6.3%に達する見通しだが、年末時点のインフレ率は3%を超え、22年半ばまでその水準での高止まりが続くと予想する。
原題:Why Brexit Britain Is Isolated, Vulnerable and Running on Fumes(抜粋)