岸田首相(自民党総裁)は15日、読売新聞のインタビューに応じ、敵のミサイル発射基地などを自衛目的で破壊する「敵基地攻撃能力」の保有について、改定する国家安全保障戦略への明記に意欲を示した。米国のバイデン大統領との首脳会談に向け、年内の訪米を模索する考えも表明した。

 首相は敵基地攻撃能力の保有を安保戦略に盛り込むことについて、「一つの選択肢だ」と述べた。その上で、北朝鮮が開発を進める極超音速滑空兵器や変則的な軌道で飛ぶ弾道ミサイルなどの脅威に言及し、「ミサイルの能力は日々高度化している。国民の命と暮らしを守るため、現実的なあらゆる選択肢を検討する姿勢は大事だ」と強調した。

 国家安保戦略の改定時期は「できるだけ急ぎたい」と述べるにとどめた。

 敵基地攻撃能力は、北朝鮮などで迎撃困難な新型ミサイルの開発が進んでいることを踏まえ、2020年に当時の安倍首相が検討を表明した。ミサイル発射基地に対する攻撃能力を備えることで、発射を思いとどまらせる抑止力を強化する狙いがある。だが、同年9月就任の菅前首相は議論を棚上げしていた。

 日米首脳会談については、「私が米国を訪問することを含め、バイデン氏とはできるだけ早く会いたい。早ければ年内を目指したい」と語った。

 衆院選公約で掲げた「経済安全保障推進法(仮称)」の制定に向けては、「法案は来年の通常国会への提出を目指す」と明言。法案には、半導体などのサプライチェーン(供給網)強化に向け、関連企業の国内誘致を補助金などで後押しする仕組みを盛り込む方針を示した。首相は「サプライチェーンを国内で完結するようにする取り組みが大変重要だ」と指摘した。

 また、新型コロナウイルス対策で非正規労働者らに行う家計支援について、「困っている人にできるだけ迅速に現金を支給する。額ももちろん大事だが、去年の反省に基づいてスピード感が大事だ」と述べた。昨年行われた1人10万円の特別定額給付金では、申請時に混乱が生じたことを踏まえ、手続きを簡素化する考えを示したものだ。