[東京 29日 ロイター] – 東京地裁は29日、東京機械製作所の買収防衛策の発動差し止めを求めたアジア開発キャピタルの仮処分申し立てを却下した。東京機械が発表した。ロイターが閲覧した判決文によると、地裁は株主であるアジア開発の議決権を制限したまま臨時株主総会で防衛策発動が承認されたことについて、「直ちに不合理であるとはいえない」とした。アジア開発は近く高裁へ抗告する。

アジア開発は今年6月から東京機械の株式を買い集め、約40%を保有する筆頭株主となっていた。東京機械はアジア開発を除く株主に新株予約権を付与し、保有比率を引き下げる買収防衛策の発動を計画。今月22日の臨時株主総会で賛成多数で可決されたものの、アジア開発側は「株主平等の原則に反する」などとして総会前から差し止めの仮処分を求めていた。

買収防衛策は株主総会で承認されて導入するのが一般的だが、今回は利害関係者としてアジア開発に議決権行使を認めなかった点が異例だった。地裁は、東京機械が株式を買い増さないよう求め、対抗策の発動を警告するなどしたにもかかわらず、アジア開発が従わなかったことを「(他の株主に対して)相応の強圧性があった」と判断。アジア開発の議決権行使が制限されたことを「不合理とはいえない」とした。

アジア開発側の大塚和成弁護士は、強圧性という要件が不明確と指摘。「市場買い付けでも部分公開買い付けでも、強圧性があるとされる買収は全て、買収者を除いて(安定株主は除かずに)決議してよいことになる」とコメントした。

大塚弁護士によると、アジア開発は11月1日に抗告する予定にしている。

企業統治の専門家で、公益社団法人の会社役員育成機構のニコラス・ベネシュ代表理事はロイターの取材に対し、特定の株主から買収防衛策の議決権行使を排除した臨時株主総会を裁判所が支持することは悪しき前例になると指摘。「会社法の株主平等原則に違反するほか、株主の権利を踏みにじり、過去6年間のガバナンス改革を台無しにすることになる」とした。

(山崎牧子、新田裕貴、久保信博、石田仁志 編集:青山敦子)