Venus Feng
- 許氏の資産、恒大の配当が大半占める-上場来で70億ドル超受け取る
- ヨットやジェット機などぜいたく品も所有-推定4億8500万ドル相当
債務危機にある中国の不動産開発大手、中国恒大集団の創業者、許家印会長が所有する全長約60メートルのスーパーヨット「イベント」は、香港の「ゴールド・コースト」ヨットクラブでもひときわ目立っている。
恒大の巨大集合住宅プロジェクトの1つから徒歩約15分の港に停泊しているこのヨットは許氏の個人資産の一端にすぎないが、同社が3000億ドル(約34兆円)を超える債務の履行に苦戦する中、こうした資産にますます厳しい視線が注がれている。
中国当局は恒大の債務危機を緩和するため、許氏に個人資産をなげうつよう指示。同社がいつまでデフォルトを回避できるかを見極めようとしている債券投資家にとって、許氏の個人的なバランスシートは主要な不確定要素となっている。同氏の資産の多くが企業や関連会社の複雑なネットワークを通じて所有され、最終的な所有者が覆い隠されている可能性があることを考えれば、同氏の財力を推し量るのは容易ではない。
ブルームバーグ・ビリオネア指数の分析によれば、恒大が2009年に香港に上場して以来、許氏が受け取った配当は70億ドル超に上り、同氏はうち約33億ドルを投じて同社の株式や債券、高額資産を取得してきた。差額がどうなったのかは分かっていない。
それでも許氏が持つ高額資産だけでも、まだ期限が到来していないか年内に猶予期間が終了する債券のクーポン4億ドル余りの支払いに役立つ可能性がある。そうしたぜいたく品(推定4億8500万ドル相当)には、自身や恒大の関連会社名義のヨットや社用ジェット機、邸宅が含まれる。恒大は先月、許氏が所有する株式と邸宅を担保に融資を受け、猶予期間切れ前に債券2本のクーポンを支払った。
香港大学アジアグローバル研究所の陳志武所長は「許氏は一部債務を返済するため少なくともある程度の個人資産を充てていることを示す必要がある。より深刻な結果を避けるためには大いに誠意を示さざるを得ない」と述べた。
恒大を通じて許氏にコメントを求めたが、返答はなかった。
資金調達に躍起になっている許氏が売却したり、抵当に入れたりする可能性のある高額資産は以下の通り。
ヨット
許氏は16年、ケイマン諸島に設立した関連会社のスカイ・グレートを通じてスーパーヨットの「イベント」を購入。データ会社のベセルズバリューによれば、価値は4510万ドル相当。10月29日時点で、このヨットは香港の屯門区の港に係留されていた。
ジェット機
恒大の複数の関連企業は少なくとも3機の社用ジェット機(ガルフストリーム、エアバスACJ319、エアバスACJ330)を保有。3機合わせて推計平均で約2億3600万ドル相当の価値を持つ。
住宅
ブルームバーグの分析では、許氏の関連会社が香港のピーク地区に保有する邸宅2軒の価値は計2億400万ドルと推定される。地元メディアの報道によると、いずれも許氏の盟友として知られる鄭一族が率いる新世界発展が開発した物件。
その他
世界の資産家500人を対象とするブルームバーグ・ビリオネア指数によれば、現金と売却可能な資産を除き、恒大と関連会社に関する許氏の持ち分は約30億ドル相当。同社の株価は年初来で55%余り下げている。
恒大がなお所有するプロサッカークラブ「広州FC」(旧「広州恒大」)は現在、生き残るために政府支援を求めている。ブルームバーグ・インテリジェンス9月の分析で、恒大のサッカー関連事業は無価値とされていた。
原題:Evergrande Bondholders Eye Founder’s Megayacht, Planes, Mansions(抜粋)