岸田文雄首相は11日、菅義偉前首相と首相官邸で会談した。菅氏の在任中の新型コロナウイルス対応に謝意を示した上で、政権運営への協力を要請した。不仲が指摘される両氏だが、岸田氏は出迎えと見送りを自らの執務室ではなく、わざわざ階下のエントランスで行うなど異例の気遣いを見せた。政権安定に向け、関係を修復する狙いがあるとみられる。
10月4日の首相交代後、2人の面会は初めて。菅氏は岸田氏の自民党総裁選出馬表明を引き金に退陣に追い込まれていった経緯があり、しこりが残っているとされる。
会談は岸田氏が「議員会館の事務所に伺いたい」と申し入れ、菅氏が自分から出向くと応じて実現した。岸田氏はコロナ対策について「今後も協力してほしい」と求め、菅氏は「もちろんそうする」と答えた。会談時間は約20分間で、甘党の菅氏の大好物であるどら焼きを食べながらだった。岸田氏は「気になることがあったら、いつでも言ってほしい」とも語ったという。
菅氏をめぐっては、岸田氏と距離を置く二階、石破、石原各派との連携強化の臆測が自民党内で飛び交う。政府内では、菅氏退陣後に政権批判を強める日本維新の会とのパイプ役になってもらう期待もあり、「首相は菅氏に接近を図っているのではないか」(関係者)との見方が出ている。