政府・与党が岸田文雄首相の掲げる所得再分配に向け、来年以降に金融所得課税の強化を本格的に議論する方向で調整に入ったことが16日、分かった。年末に決定する来年度税制改正大綱で、重要テーマとして議論を継続する「検討事項」に明記する。金融課税の強化には異論が根強いが、格差是正を目指す岸田政権の重点課題に位置付ける。
給与などの所得課税は収入が多いほど税負担が重くなる「累進課税」と呼ばれる仕組みで、税率は最大55%。これに対し、株式譲渡益や利子収入といった金融所得は税率が一律20%に設定されており、収入全体に占める金融所得の割合が高いほど税負担は軽くなる。
日本では高所得者層ほど金融所得の割合が高く、年収1億円を境に税負担率が下がる「1億円の壁」の存在が指摘されている。首相は9月の自民党総裁選で、金融所得への課税を強化し、格差是正につなげる方針を打ち出していた。
しかし、株価下落の一因になったと指摘され、10月の首相就任後に先送りを表明。野党は急な方針転換を批判している。来年度税制改正大綱の検討事項に盛り込むことで、今後の国会審議で首相が「公約先送り」を追及された場合に備える思惑もうかがえる。