[東京 18日 ロイター] – 経団連の大橋徹二副会長(コマツ会長)は18日、最近の物価高が春季労使交渉に与える影響について、消費者物価と企業物価の上昇を分けて考えるべきだとしたうえで、最終的には各社の総合的な判断になるとの見通しを示した。
<企業業績にばらつき、一律引き上げは困難>
経団連はこの日、春闘交渉の指針として、経営労働政策特別委員会がまとめた22年度の報告書を公表。コロナ禍が長期化して企業業績のばらつきが大きくなっているとして、経済情勢や業績などを総合的に勘案し、労使交渉を経て各社が実情に応じた賃金を決定する「大原則」の重要性が「21年に増して高まっている」と指摘した。
岸田文雄首相は17日、衆院本会議の施政方針演説で、春闘に向けて「賃上げ率の低下トレンドを一気に反転させたい」と期待感を表明した。
大橋副会長は、企業業績の回復は「一律ではない」としたうえで、多方面で相次ぐ値上げの背景には「経営者が(コスト高に)耐えきれないこと」に加え、価格転嫁に慎重な日本企業の間でも、原材料の高騰が「今なら上げられるという判断」につながっていると指摘した。
そのうえで、賃上げは「消費者物価動向や従業員の生活、会社の経営・損益状況、(販売価格の)値上げが可能か、すべてを含めてみていくのだろう。消費者物価と企業の売り上げ単価は分けて見るべきだ」と話した。
日銀が14日に発表した12月企業物価指数(CGPI)は前年同月比プラス8.5%と、前月の過去最高に次ぐ2番目の伸び率を記録。一方、きょう公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、今年度の消費者物価見通しをプラス1.1%へ引き上げるにとどめた。
<企業の現預金、増加の要因は借入>
副会長は積み上がった企業の現預金にも言及。利益剰余金は企業買収や設備投資などへ活用しているほか「現預金増と見合いぐらいで(同様の規模で)借金が増えている」と、コロナ禍で手元資金を確保するために借入金を増やした結果だとして、賃上げの原資に直接活用できるものではないと説明した。