沖縄県名護市長選で岸田政権が推した現職が再選を果たし、政府・与党内に安堵(あんど)が広がった。今年の沖縄は秋の知事選など首長選が続く「選挙イヤー」。その初戦を制し、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設や、夏の参院選にも弾みがつくとみている。
「また頑張っていける」 激戦制した渡具知氏―沖縄県名護市長選
「厳しい中での選挙だったが、選挙イヤーの大切な最初の選挙で大きな勝利を飾ることができた」。自民党の茂木敏充幹事長は23日夜、党本部で記者団にこう語った。
市長選を重視した岸田政権は、昨年の衆院選から間もない11月に松野博一官房長官と茂木氏が沖縄を訪問して現職をてこ入れ。今月16日の告示前後から茂木氏や知名度が高い河野太郎党広報本部長らを投入し、総力戦を展開するはずだった。
だが、新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染が急拡大。本土からの応援は見送らざるを得ず、電話での支援呼び掛けなどにとどめた。感染は「米軍由来」と批判され、与党内から「厳しいかもしれない」と弱気の声が漏れたが、岸田文雄首相の政権運営にも影響する注目選挙を辛くも乗り切った。
自民党は近年、基地問題に対する県民の根強い不満もあり沖縄の各種選挙で苦戦してきた。だが、衆院選では名護市を含む沖縄3区で、2012年以来久々に議席を奪還。今年は参院選や知事選にも注力し、勢力図の塗り替えをもくろむ。政府関係者は「沖縄経済が沈んでおり、与党と官邸へのパイプに期待したのではないか」と分析する。
一方、衆院選で議席を減らした立憲民主党と共産党は支援候補が敗北し、態勢立て直しのきっかけにはできなかった。立民の大西健介選対委員長は「結果は残念だが、参院選や知事選へ一丸となって戦う準備を進める」との談話を発表した。
今後は24日から始まる衆院予算委員会などの国会論戦を通じ、首相に対する対決姿勢を強める構え。立民幹部は「市長選の勝敗とは関係なく、在日米軍の在り方を追及していく」と語り、共産党の小池晃書記局長は23日、記者団に「今回の結果で新基地が容認されたとして建設を強行することは許されない」と訴えた。