【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)欧州委員会が2日、脱炭素化に貢献し「グリーン」だと見なせる投資対象を示す「EUタクソノミー」に、原発と天然ガスを条件付きで加える最終案を発表した。一部加盟国や環境団体などが異論を唱える中、脱炭素社会実現へ「使える手段は全て活用する必要がある」(マクギネス委員)との判断で押し切った格好だ。
ただ、オーストリアとルクセンブルクが「グリーンウォッシュ(見せ掛けの環境保護)だ」などとして欧州委を提訴する考えを表明。ドイツのハーベック経済・気候保護相も声明で「原発は危険で高くつく」と批判するなど反発も強まっている。提案が今後覆る可能性は低いとみられるが、EUの気候変動政策全体を左右する可能性のある施策だけに、禍根を残しそうだ。
タクソノミーは脱炭素化投資を喚起するため、投資家や企業に持続可能な投資先と判断する基準を示すもの。原発と天然ガスが今回追加された背景には、再生可能エネルギーだけではまだ安定的に域内需要を賄えないという現実がある。
原発は、輸入に頼る化石燃料の価格高騰もあって安定電源として再評価され、原発大国フランスや東欧中心に活用論が優勢となった。天然ガスは、年内の原発全廃を掲げるドイツが追加を求めてきた。
一方、欧州委はいずれも再エネ普及までの「暫定的なエネルギー」だと説明。新規原発は2045年までの建設認可を必要とするなどグリーン認定に時限的条件も課した。しかし、こうした方針には加盟国だけなく一部の科学者や欧州投資銀行(EIB)トップなどからも異議が噴出していた。
マクギネス氏は2日の記者会見で、「不完全かもしれないが、真の解決策だ」と強調した。だが、欧州メディアによると、欧州委内でも複数委員が反対票を投じたとされ、亀裂の深さが浮き彫りとなっている。