日本銀行は10日夕、固定利回りで無制限に国債を買い入れる指し値オペの実施を発表した。オファー日は14日。欧米の利上げ観測を背景に国内金利にも上昇圧力がかかっており、長期金利が日銀の許容する上限に接近したことで、金利上昇を抑制する姿勢を示した形だ。
買い入れを行う利回り水準は新発10年国債365回債で0.25%となる。買い入れ対象国債は10年国債363回債、364回債、365回債。買い入れる際の固定利回り格差はオファー通知などで提示される。
日銀金融市場局は、「このところの長期金利の動きを踏まえ10年物国債金利の操作目標を0%程度とする金融市場調節方針をしっかり実現するよう実施したものである」とのコメントを発表した。
10日夕の債券市場では、新発10年国債利回りが一時0.23%と、2016年1月以来の高水準を更新した。欧州国債利回りが上昇していることや日本時間の今夜発表される1月の米消費者物価指数(CPI)に対する警戒感から先物中心に売りが優勢だった。日銀の政策修正を巡る思惑も引き続き重し。指し値オペの通知を受けて、同利回りは0.22%に低下した。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、日銀は10年金利0.25%の上限を守るという意思表示をしてきたと指摘。「米長期金利もどんどん上昇していくわけではないだろうから、利回り上昇圧力は徐々に落ち着いてくるのではないか」との見方を示した。
外国為替市場のドル・円相場は一時、1ドル=115円88銭と、1月7日以来の水準まで円安・ドル高が進んだ。NBCフィナンシャルマーケッツ・アジアのディレクター、デービッド・ルー氏(香港在勤)は、「足元の金利上昇の思惑に日銀が先回りに対応してきたことに対し円売りで反応した」と言い、「日銀の緩和政策維持の姿勢が明確に示されただけに円を売りやすくなっている」との見方を示した。
指し値オペが実施されるのは2018年7月以来。その後、日銀は21年3月の金融政策決定会合で、長期金利の変動許容幅をゼロ%上下ともに0.25%程度と明確化した上で、強力に金利の上限を画することができる連続指し値オペの導入を決めた。