来月投票の韓国大統領選は、13~14日の立候補届出を経て、15日から公式選挙運動が始まる。革新系与党「共に民主党」候補の李在明前京畿道知事(57)は、ソウル近郊・城南市長、知事の経験から実行力をアピール。しかし、過去の都市開発をめぐる疑惑が選挙戦を揺るがし、地元市民の評価は割れている。
野党尹氏、現政権捜査に言及 文氏激怒、謝罪要求―韓国大統領選
◇「原点」の地で涙
1月24日、李氏は城南市の庶民層が多い地域にある商店街「上大院市場」を訪れた。李氏は「ここがまさに李在明と家族が生計を維持した場所だ」と語り、「私が政治を行う理由は、挫折して苦しみ絶望する人々に、公正な世の中をつくってあげるためだ」と涙を拭った。
李氏は小学校卒業後に商店街そばへ移り住み、両親は商店街で清掃員などをして苦しい生活を支えた。中学、高校に通えなかった李氏も同年代の女子生徒の視線を避けながら、父が引くリヤカーの後ろを押していたという。李氏は「惨めな暮らしが、どんな苦境にも屈せず前に進む原動力になった」と訴えた。
商店街で食堂を営む男性(69)は今月9日、「貧しい環境から自分の力で成功した人だから、情が移る。底辺に生きる人々の暮らしを良くしてほしい」と期待を示した。
もともと城南市は革新系が強く、李氏は2010~18年に市長を、18~21年に城南市がある京畿道の知事を務めた。市の財政再建や全生徒に無償で学校の制服を支給する事業などで「やり手首長」と話題になった。地元のタクシー運転手(74)は「推進力があり、苦しい人々を助けてくれる」と好意的だ。
◇失望隠さぬ元支持者
しかし昨年以降、市長時代の都市開発で特定企業に過大な利益がもたらされていたなど、複数の疑惑が表面化。最近は知事時代に妻が李氏側近に私的な買い物をさせ、道のクレジットカードで決済していた疑惑も浮上し、妻は謝罪の記者会見に追い込まれた。
高層マンションが立ち並ぶ疑惑の開発地区、大庄洞で不動産業を営み、市長選で李氏に投票したという50代女性は「約束を守らないうそつきだ。正義漢ぶっているが、全く違う」と憤る。市内に住む大学生の安駿豪さん(25)は「市長時代は好感を持っていたが、悪いニュースばかり接するうちに疑惑を信じるようになった」と語った。
最近の世論調査では、保守系最大野党「国民の力」候補の尹錫悦前検事総長(61)に対し、李氏はやや劣勢だ。14年以降、市議会で李氏を追及してきた国民の力の李基仁議員は「地元出身だからと応援する市民と、疑惑で失望した市民が半々だ」と説明する。その上で「李在明氏は疑惑への関与を否定するが、支持率に影響している。市長、知事だった約11年間に対する審判論が広がっている」と尹氏の勝利に自信を示した。