【北京時事】中国の国会に当たる第13期全国人民代表大会(全人代)第5回会議が5日午前(日本時間同)、北京の人民大会堂で開幕した。李克強首相が政府活動報告を発表し、今年の経済成長目標を5.5%前後とする方針を示した。昨年の成長率は8.1%で「6%以上」とした目標を達成したが、今年は「雇用安定・民生保障・リスク防止の必要性を考慮」し、過去2年の成長率の平均値にとどめた。

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 国防予算は前年比7.1%増の1兆4504億5000万元(約26兆3000億円)。新型コロナウイルス禍で経済が打撃を受ける中、経済成長目標を大幅に上回る伸びを確保し、習近平国家主席(共産党総書記)が掲げる「強軍」路線の継続が明確に示された。活動報告は「習近平強軍思想を深く貫徹し、国家の主権・安全・発展の利益を守り抜かなければならない」と訴えた。

 減速懸念が強まる中国経済について、活動報告は「わが国が直面するリスクや課題は著しく増加している」と指摘した上で、習氏が3期目入りを目指す秋の党大会を控え「今年の政府活動はあくまで安定を最優先する」と強調した。習氏が進める「共同富裕」については「共同奮闘して着実に推し進める」とした。

 また、経済のけん引役である内需を下支えするため、電気自動車(EV)の購入や農村部での家電の買い替えを促す政策を提示。金融緩和や減税などを通じて、中小企業の資金繰り支援に力を入れる方針も示した。

 一方、注目されていた不動産税の試験実施や環太平洋連携協定(TPP)への加入申請に関する言及はなかった。国内で問題化するのを避けたとみられる。コロナ対策に関しては「国内での再発防止を堅持し、感染症対策を不断に最適化」すると表明した。

 活動報告は、台湾について「『台湾独立』分裂活動と外部勢力からの干渉に断固反対する」と主張した。昨年は「外部の干渉」に関する記述はなく、台湾への関与を強める米国をけん制する狙いがあるとみられる。
 香港に関しては「愛国者による香港統治」や「中央の全面的な管轄統治権を徹底する」という表現が新たに加わった。2020~21年の香港国家安全維持法施行や選挙制度の変更を踏まえ、統制強化の姿勢を改めて鮮明にした。