ロシアのウクライナ侵攻の陰に隠れているが、世界経済にとって目先喫緊の課題は騰勢を強めるインフレにどう対応するかだ。その答えを見極めるための会合が今週あいついで開かれる。最も注目されるのは米国のFOMC(公開市場委員会)。政策金利を0.25%引き上げる見通し。パウエルFRB議長は先週の議会証言で0.25%の引き上げを支持すると証言している。FOMCでの利上げ決定はすでに既定路線になっている。問題は利上げ幅。0.25%説が最も有力だが、仮に0.5%に一気に引き上げることが決まれば、それえなりのサプライズになるだろう。利上げ幅以上に関心を集めそうなのがウクライナ戦争に絡んで世界経済がこの先どう動くか、パウエル議長の見解に注目が集まる。個人的な見解では「注意深く見守る」というのが関の山か、金融当局に明快な見解を求めること自体が「無謀な要求」という気もする。

FOMC終了の翌日から日銀の金融政策決定会合が開かれる。こちらは金融政策の変更はなし。黒田日銀総裁の記者会見が注目の的。とはいえ、新しい見解なり政策変更の可能性はほとんど期待できそうにない。ウクライナ戦争がなかったとしても世界の中央銀行は、政策金利の引き上げを前提に金融政策の調整を進めている。日本でもガソリン価格をはじめ小麦や水産物、希少貴金属、半導体など幅広い物品が値上がりしている。にもかかわらず黒田日銀総裁は「2%の物価目標」を実現するためには長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール<YCC>)付量的質的金融緩和を維持するだろう。言葉は悪いがまるで「バカの一つ覚え」だ。ついでにひと言。岸田首相はきのう、拉致被害者の前会長・飯塚さんのお別れの会で次のように述べた。「あらゆるチャンスを逃すことなく全力で取り組む」。歴代首相が唱える決まり文句だ。これは「何もしない」ことを意味している。無意味だ。

黒田総裁が就任して丸7年が経過した。この間一貫して日銀は異次元緩和と称した大胆な金融緩和政策を推進してきた。効果はあったのか?最初の1、2年はアベノミクスの柱として日本経済を牽引したように見えた。しかし、それも見掛け倒し。その後は黒田総裁が折に触れて自画自賛するほどの効果はなし。むしろYCC付金融緩和で市場機能を圧迫するというマイナス効果の方が大きくなっている。だが、金融界の独裁権力者と化した黒田総裁に諫言する側近や学者、学識経験者、マスコミは全く見当たらない。無意味な政策が延々と続いている。その姿はまるでプーチンのようだ。世界に背を向け、8年近い金融政策の正当性を堂々と語り続ける。米国の利上げ後に実施される金融政策決定会合後の記者会見で、その姿が再びメディアを通して拡散されるだろう。日本では無意味なことが多い。