[ソウル/東京 16日 ロイター] – 韓国軍は、北朝鮮が16日に「未確認の飛翔体」を発射したが、発射直後に失敗したようだと明らかにした。すでに米国と韓国は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の準備を進めている可能性があると警告していた。
NHKは16日午前、防衛省関係者の話として、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性のあるものが発射された情報があると報じた。
韓国軍合同参謀本部によると、飛翔体は北朝鮮の首都平壌郊外にある平壌順安(スンアン)国際空港(順安飛行場)から発射。「発射直後に失敗したと推定される」と述べた。聯合ニュースは関係者の話として、飛翔体は空中で爆発したようだと伝えた。
北朝鮮は17年以降、ICBMや核兵器の実験を行っていないが、米国との非核化交渉が遅れているため、実験を再開する可能性があると表明している。
米インド太平洋軍は、北朝鮮の「弾道ミサイル発射」を非難するとともに、状況の不安定化につながる行動を自制するよう求めた。発射が失敗だったとされる点については言及しなかった。
<謎の飛行場 ICBM開発拠点か>
NKニュースによると、飛翔体の発射後、破片のようなものが平壌市内やその近郊に落下したというが、現時点で物的・人的被害の情報は確認されていない。
専門家からは、発射場所とされる順安飛行場がICBM関連技術の開発拠点になるとの見方が出ている。
2017年8月以降、順安飛行場を使った重要実験が増えている。米当局がICBM「火星17」の試射が実施されたとみる2月27日と3月5日の発射も同飛行場からだった。
米ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNS)の研究員ジェフリー・ルイス氏は「主要国際空港にミサイル開発支援施設を置くという構想は正気とは思えない」と述べ、順安飛行場を「非常に奇妙な空港」と評した。
この空港は、新型コロナウイルス禍で海外との往来が途絶える前から閑散としていて、中国便やロシア便がわずかに乗り入れるだけだった。
16年に空港に隣接する場所で弾道ミサイル向けとみられる施設の建設が始まった。この施設について、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は20年に、北朝鮮最大の車載移動式ICBMを実験目的の発射態勢にすることができるほどの高さがあると指摘している。
カーネギー国際平和財団のシニアフェロー、アンキット・パンダ氏は、首都に近いという地の利から順安飛行場が好まれていると指摘。金正恩氏が報道されることなく、発射を監視できると述べた。ただ、首都に近いだけに、今回のように失敗した場合の影響が懸念されるとも述べた。17年に火星12号が別の場所からの発射に失敗した際は、人口の多い地域に落下したという。