2022年3月21日 22時34分
ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる21日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナとは7時間、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、娘が暮らす日本に避難してきたウクライナ人の女性が21日、羽田空港で家族との再会を喜びました。
日本に避難してきたのは、首都キエフに住んでいたマリヤ・グジーさん(68)。
ウクライナの隣国のポーランドを経由して羽田空港から入国し、空港のロビーで出迎えに来た、娘のカテリーナさん(35)や孫の凌磨くん(12)と抱き合って再会を喜び合っていました。
マリヤさんは「チェルノブイリの事故で家族で避難をして、もう2度と避難はしたくないという気持ちもあったし、娘に迷惑をかけたくない気持ちもあったが、今はようやく日本に来られて安心しています」と話していました。
ウクライナの隣国ポーランドでは銃の売り上げが2倍に
ウクライナとの国境から10キロほど離れた町、プシェミシルにある銃を取り扱う店では、銃の売り上げがロシアの軍事侵攻の前と比べて2倍に増えたということです。
また手続きなしにその場で手に入れられる催涙スプレーも女性を中心に売れているということです。
首都ワルシャワの射撃場では、ロシアによる軍事侵攻後、初めて射撃を体験しに来る人たちが増えているということで、隣国への軍事侵攻が続く中、市民の自衛の動きが広がっています。
ロシア軍の攻撃で死亡の兵士の妻 徹底抗戦の意思示す
NHKのインタビューに応じたのはウクライナ西部のリビウに暮らすオレナ・ヤスチュイシンさん(51)です。
夫で軍人のオレハさんは今月13日、ポーランドとの国境に近い軍の施設でロシア軍のミサイル攻撃を受け死亡しました。オレナさんは夫を失ったことについて「非常に頼りがいのある夫でした。壁のようにしっかりしていて私や娘たちはいつも守られているように感じていました。夫がいなくなったことが実感できず、現実のこととして受け止められません」と涙ぐみながら話しました。
そのうえでロシア軍の軍事侵攻について「絶対に許されないことです。ロシアは、ウクライナのような民主的な国の発展を後戻りさせようとしています」と強く非難しました。そして「ロシアに奪われたあらゆる領土を取り戻しロシアを完全に押さえ込まなければなりません」と述べ、ロシアに徹底抗戦する意思を示しました。
犠牲となった子どもさらに増加 地元検察当局が発表
ウクライナの検察当局は、21日の時点で少なくとも115人の子どもが死亡し、148人がけがをしたと発表しました。
被害を受けた子どもが最も多いのはキエフ州で58人、次いで東部のハリコフ州で38人、北部のチェルニヒウ州で31人東部のドネツク州で29人、南部ミコライフ州で22人などとなっています。また爆撃や砲撃で被害を受けた学校などの教育施設は530にのぼり、このうち72の施設は完全に破壊されたということです。
化学工場に攻撃でアンモニアが少量漏出 ウクライナ非常事態庁
ウクライナの非常事態庁は、21日に北東部のスムイ州で化学工場が攻撃を受けて、アンモニアが入っているタンクが損傷し、ごく少量が漏れ出したと発表しました。
これにより、工場の従業員1人がけがをしたということです。一方、アンモニアの漏れを止める措置はすでに終わり、市民への被害はないとしています。
スムイ州の知事は、SNSの「テレグラム」で「ロシア軍の攻撃によるものだ」と主張しています。
キエフで再び35時間の外出禁止令
ウクライナの首都キエフのクリチコ市長は21日、SNS「テレグラム」に「外出禁止令が再び強化される」と投稿し、日本時間の22日午前3時から23日午後2時までの35時間、キエフ全域に再び外出禁止令を出すと明らかにしました。
期間中は、薬局やガソリンスタンドを含む商業施設などが利用できなくなるとしていて、キエフにいるすべての人に家の中や避難所にとどまるよう求めています。
キエフでは、現地時間の15日から17日にかけても、35時間の外出禁止令が出されました。
キエフ中心部で攻撃 8人死亡
ウクライナの首都キエフの中心部に近いポディール地区にあるショッピングセンターが20日夜、ロシア軍による攻撃を受け、ウクライナの検察当局によりますとこれまでに少なくとも8人が死亡したということです。
現地からの映像では建物が大きく壊れ、駐車場にとめてあった車が焼け焦げた様子などが確認できます。また周辺の住宅なども被害を受けたということです。
EU外相「マリウポリで起きていることは重大な戦争犯罪」
EU=ヨーロッパ連合は21日、ベルギーのブリュッセルで外相会議を開き、ウクライナへのさらなる支援やロシアへの追加制裁などについて協議します。
会議に先立ち、EUの外相にあたるボレル上級代表は記者団に対し「ロシアは多くの戦争犯罪を行っている。マリウポリで起きていることは重大な戦争犯罪だ。すべてを破壊し、爆撃して人々を殺害している。あってはならないことだ」と述べてロシアを非難しました。
中国外相 国連でのロシア非難決議棄権は「責任ある態度」
中国外務省によりますと、王毅外相は20日、北アフリカのアルジェリアの外相と会談しました。
会談のあと記者会見した王外相は、西側諸国がロシアに科している厳しい経済制裁について「一方的な制裁がエスカレートし続ければ、世界のサプライチェーンの断絶をもたらし、各国の国民の生活に打撃を与える」と述べ、反対する姿勢を重ねて示しました。
また、今月2日、国連総会で、欧米や日本など141か国が賛成して採択されたロシアを非難する決議に、アルジェリアが中国と同様に棄権したことに触れ「棄権は、戦争や制裁によって紛争を解決することに賛成しないという責任ある態度だ」と述べ、自国の立場を正当化しました。
また、王外相は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「中国と、途上国を含む大多数の国々は、正当な懸念を持っているし、似たような立場だ」と強調しました。
ゼレンスキー大統領 芸術学校爆撃に怒り
ウクライナのゼレンスキー大統領は21日、SNS上にビデオメッセージを投稿し、マリウポリの市議会が「およそ400人の市民が避難する芸術学校が19日に爆撃された」と明らかにしたことについて、ゼレンスキー大統領は「多くの人ががれきの下にいてどれだけの人が生存しているか分からない」と述べ、被害の規模は分かっていないとしました。
そのうえで「この爆撃を行ったパイロットをわれわれは必ず撃ち落とすだろう」と怒りをあらわにしました。
バイデン大統領がポーランド訪問へ
アメリカのホワイトハウスはバイデン大統領が今月25日、ウクライナの隣国、ポーランドの首都ワルシャワを訪問すると発表しました。
バイデン大統領は翌26日にポーランドのドゥダ大統領と首脳会談を行う予定で、ウクライナの人道危機などについて議論するとしています。
ロシアのマリウポリ明け渡しの通告 ウクライナは拒否か
激しい市街戦が続く東部マリウポリをめぐり、ロシア国防省は、守備にあたっているウクライナ軍に対して、武装を解除し、町を明け渡すよう通告したのに対して、ウクライナのメディアは、ベレシチュク副首相が「武装を解除し、降伏することはありえない」と述べ、通告を拒否したと伝えています。
岸田首相 インドとカンボジア訪問終え帰国
岸田総理大臣は、19日から3日間の日程でインドとカンボジアを訪れ、モディ首相、フン・セン首相との首脳会談を行いました。
一連の会談では、ウクライナ情勢をめぐって意見が交わされ、いかなる地域でも力による一方的な現状変更は許してはならないという認識で一致し、国際秩序を守るため、連携していくことを確認しました。
そして会談後に共同声明を発表し、モディ首相との声明では、ウクライナでの紛争と人道的危機に深刻な懸念を表明し、戦闘行為の即時停止を要求することなどを盛り込みました。
また、フン・セン首相との声明でも、武力行使の即時停止と軍隊の撤退を要求することなどを明記しましたが、いずれの声明も、ロシアを直接的には非難しませんでした。
ロシア国防省 ウクライナ軍にマリウポリからの撤退要求
ロシア国防省は20日夜、声明を発表し、その中で「すべてのウクライナ軍が武器を置いて、マリウポリを離れることを要求する」として、抵抗をやめてマリウポリから撤退するようウクライナ軍に迫りました。
声明では「午前10時から正午の間に、すべてのウクライナ軍と外国人のよう兵が、武器や弾薬を置けば合意されたルートで安全に脱出することと、命は保証する」としています。
さらにロシア国防省はウクライナ側に対し、21日午前5時までに書面で回答するよう求めました。
マリウポリを包囲するロシア軍が、抵抗を続けるウクライナ軍に最後通ちょうをつきつけた形ですが、ウクライナ軍が従わなかった場合、さらなる戦闘の激化が懸念されます。
チェルノブイリ原発 働き続けていた職員の約半数が帰宅 IAEA
IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は20日、声明を発表し、ウクライナ北部のチェルノブイリ原子力発電所が先月ロシア軍に占拠されて以降、働き続けていた職員のおよそ半数がようやく自宅に戻ることができたとウクライナ当局から連絡を受けたことを明らかにしました。
帰宅した職員と交代して、他の職員が勤務にあたっているということです。
グロッシ事務局長は、原発がロシア軍に占拠されて以降200人以上の職員らが休みなく働き続けた結果、心身ともに疲労がたまって原発の安全に関わる機器の修理や保守に支障が出ていることに懸念を強めていました。
グロッシ事務局長は「遅きに失したとはいえ、前向きな進展だ」と歓迎したうえで「非常に困難な状況で働いたことは全面的な敬意と称賛に値する」と述べています。
一方で、チェルノブイリ原発の置かれた状況は困難で不確実だとして、ウクライナの原子力施設の安全確保に向け、IAEAとして対応を急ぐ必要性を強調しました。
米国連大使 “マリウポリ市民 ロシアへ連れ去り”の訴えに懸念
ウクライナ東部のマリウポリの市議会が、市民1000人以上が避難していた施設からロシアへ連れ去られたと訴えていることについて、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は20日、CNNテレビの取材に対し「確認できていない」としながらも「気がかりだ。ウクライナの市民をロシアへ強制的に連れて行き、収容所のような場所に入れるのは恥ずべきことだ」と述べ、強い懸念を示しました。
ゼレンスキー大統領 ロシアとの関係重視する11政党の活動を禁止
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとの関係を重視する野党など、11の政党の活動をロシアの侵攻に伴う戒厳令の期間中、禁止することを明らかにしました。
ゼレンスキー大統領は20日に公表したビデオメッセージで「仲たがいをたくらむ政治家たちの活動は成功せず、厳しい反応に直面するだろう。ロシアがひき起こした大規模な戦争の影響を考慮した結果、ロシアとつながりのある一部の政党の活動を停止することを決定した」と述べました。
ゼレンスキー大統領 イスラエルの議会で演説 さらなる支援求める
ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、イスラエルの議会でオンライン形式で演説しました。
この中でゼレンスキー大統領は、ロシアの軍事侵攻を第2次世界大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人の大量虐殺、ホロコーストになぞらえ「ロシアはいまナチスと同じことをしようとしている」と訴えました。
そのうえで、イスラエル軍が使用する迎撃ミサイルシステム「アイアンドーム」に言及し「アイアンドームは世界最高のシステムであり、どうすればウクライナの国民やユダヤ人を守ることができるか理解しているはずだ」などと述べ、武器の供与などを念頭にさらなる支援を求めました。
イスラエルは、ゼレンスキー大統領をはじめ多くのユダヤ人が暮らすウクライナと良好な関係を築いている一方、中東で影響力を増すロシアとの関係も重視しています。
ただ、双方と良好な関係を維持していることから、ベネット首相はプーチン大統領やゼレンスキー大統領とたびたび会談するなどして停戦に向けた仲介に努めています。
ゼレンスキー大統領「プーチン大統領と交渉する用意ある」
CNNテレビが20日午前、日本時間の20日夜遅く、放送したインタビューのなかでウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシア軍は私たちを皆殺しにするためにやって来た。ウクライナの市民と軍が持つ尊厳はロシア軍に強力な打撃を与えることができると証明したが、残念ながら、それで命を守り続けることはできない」と述べました。
そして「私はプーチン大統領と交渉する用意がある。交渉抜きにこの戦争を終わらせることはできない。仮に1%でもこの戦争を終わらせるチャンスがあるのであれば、交渉する必要がある」と述べ、連日、大勢の市民がロシア軍の攻撃で命を落とすなか、あらゆる手を尽くしてプーチン大統領との対話を実現させたいという考えを示しました。
そのうえでゼレンスキー大統領は「交渉に向けた試みが失敗すれば、それは第3次世界大戦が起きることを意味する」と述べ、交渉が実現しなければ戦火がさらに広がることになると訴えました。
ロシア国営テレビ放送中に反戦訴えた女性 米テレビ番組に出演
ロシア国営テレビのニュース番組の放送中に反戦を訴え、一時、警察に拘束されたマリーナ・オフシャンニコワさんが20日、アメリカのABCテレビの番組に出演し、「私のパフォーマンスが人々の考えを変えるきっかけとなればと思った」と述べ、抗議の意思を示した理由を改めて語りました。
オフシャンニコワさんはすでに国営テレビに辞表を提出していますが、今後については、「私は愛国者です。私も子どもたちもロシアに住みたいと思っています」と述べ、子どもたちの安全が心配だとしながらもロシアを離れるつもりがないと強調しました。
そして、「これはプーチンの戦争であって、ロシア国民の戦争ではありません。いまは非常に暗く困難なときですが、すべての人が声をあげなければいけない」と述べ、戦争に抗議の意思を示すようロシアの人々に改めて呼びかけました。
オフシャンニコワさんがニュース番組中に反戦を訴えた行為をめぐっては捜査当局が予備的な捜査に着手したとロシア国営の通信社が伝えていて、言論統制を強めるプーチン政権が重い刑事罰を科すのか、対応に注目が集まっています。
ロシア軍が掌握と発表の地域 市民たちが抗議の声上げる
ロシア軍が掌握したと発表しているウクライナ南部のヘルソンでは、20日、市民たちが街なかに進入してきたロシア軍の車両の前に立ちはだかって抗議の声を上げました。
UNHCR「1000万人が国内外への避難を余儀なくされている」
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のフィリッポ・グランディ高等弁務官は日本時間の20日、ウクライナの避難者についてツイッターで「1000万人が国内外への避難を余儀なくされている」と投稿しました。
19日時点のUNHCRのまとめによりますとウクライナ国外に避難した人の数は338万人を超えていて、このうち▽ポーランドでおよそ205万人、▽ルーマニアでおよそ52万人、▽モルドバでおよそ36万人などとなっています。
また、▽ロシアに避難した人はおよそ18万人となっています。
一方、IOM=国際移住機関によりますと、ウクライナ国内で避難している人の数は16日時点の推計でおよそ648万人に上るということです。