バイデン米大統領は28日、5兆8000億ドル(約718兆円)規模の2023会計年度(22年10月-23年9月)予算教書を公表した。民主党中道派に配慮した内容で、財政赤字削減や警察・退役軍人向け追加予算に加え、新たな社会支出プログラムの交渉に向けた柔軟性が強調されている。

  議会は予算教書で示された予算編成方針を考慮しないことが多い上に、与野党議席数が小差で提案の大半は通過する可能性が低いが、それでも予算教書はメッセージの伝達という意味で重要な役割を果たす。

予算教書について語るバイデン大統領(3月28日)Photographer: Ting Shen/Bloomberg

  予算教書にはドルベースで最終的に史上最大の増税となる措置が含まれており、経済規模と比べた財政赤字の安定化につなげる。

  増税案は富裕層と大企業を対象に10年間で2兆5000億ドル強の歳入増を見込んでおり、資産1億ドル以上の超富裕層を対象に未実現キャピタルゲインへの最低20%課税案が示された。

  また社会保障などの義務的プログラム以外の分野へのいわゆる裁量的支出として1兆5980億ドルを盛り込み、そのうち国防関連プログラムに8130億ドル、国内支出に7690億ドルを計上している。国防支出の大部分を占める7730億ドルは国防総省向けで、ホワイトハウスは「国家安全保障への過去最大規模の投資」と説明した。国防支出は24年度に8430億ドル、25年度までに8510億ドルに増えるとしている。

  裁量的支出はバイデン大統領が今月署名した22年度包括的歳出法案から5.7%増となる。財政赤字は新型コロナウイルス禍に関連した支援プログラムの廃止などにより、向こう10年間で1兆ドル減少する見通し。ただこの期間の財政赤字は対国内総生産(GDP)比で平均4.7%を見込み、連邦政府債務残高は引き続き増える見通し。

  バイデン大統領はホワイトハウスで「われわれはトランプ前政権下の赤字を減らし、財政を立て直す」と発言。「大企業と超富裕層に相応の税負担を課す一方で、堅実な投資と経済成長、そしてより公平な経済を実現する」と強調した。

  予算教書では、バイデン政権の税制・支出案「ビルド・バック・ベター(より良い再建)」の経済施策を巡る交渉の妨げにならないよう、提案の具体的な支出・収入額は示されなかった。

バイデン米大統領が5兆8000億ドル規模の予算教書を公表Source: Bloomberg

原題:Biden’s $5.8 Trillion Budget Would Hike Taxes on the Wealthiest(抜粋)