[ロンドン 27日 ロイター] – ロシアの外貨建て国債がデフォルト(債務不履行)となった。5月下旬の期日に実施できず1カ月の猶予期間に入っていた利払いが、最終日の26日を過ぎても確認されていない。対外債務の不履行はロシア革命以降で初めて。ウクライナ侵攻を受けた西側は金融制裁が影響した。
問題となっているのは、米ドル建てとユーロ建て国債の1億ドル相当分の利払い。本来の支払い期限である5月27日に利払いができず、30日間の支払い猶予期間が設けられており、6月26日がその最終日だった。
ロシア財務省は、国内の証券保管振替機関にユーロとドルで支払いを行い、義務を果たしたとしているが、27日時点で、台湾の一部投資家が利払いを受けていないとの情報が伝わっている。
<米国は債務不履行を指摘、ロシアは否定>
米ホワイトハウスはこの日、制裁措置でロシアが世界の金融システムから事実上切り離されたため、ロシアはボルシェビキ革命以降初めて債務不履行に陥ったとの見解を表明。これに先立ち米当局者は、デフォルトは制裁がいかにロシア経済に劇的な影響を与えたかを示すと述べていた。
ロシア大統領府はデフォルトには当たらないと反論。ペスコフ大統領報道官は、ロシアが債務不履行に陥ったとの見方は「絶対に正当化できない」とし、「ユーロクリアが資金を保留し、受け取るべき人に引き渡さなかったことはロシアの問題ではない。このような状況を債務不履行と呼ぶ根拠は全くない」と述べた。
欧州の国際証券決済機関ユーロクリアから現時点でコメントは得られていない。
ロシア財務省はこの日、外国の金融仲介業者はロシア財務省の管轄外にあるとし、外国の債券保有者に対し支払いを差し控えている業者と直接交渉するよう呼びかけた上で、「投資家が資金を受け取れなかったのは、支払いが行われなかったためではなく、第三者の行為によるものだった。こうしたことは債務不履行を示す状況として(債券の)発行文書に直接明記されていない」とした。
<金融上の核爆弾>
ロシアは制裁下でも外貨建て債券の支払いを行っていたが、5月に米政府が制裁の特例措置の失効を決定したことが決定的打撃となった。
法律事務所クイン・エマニュエルのソブリン訴訟部門責任者は「3月以降、ロシアのデフォルトはおそらく不可避で、いつ起こるかというタイミングが問題だった」と指摘。特例措置の失効がその答えとなり現実のものとなったとした。
デフォルトと見なされると格付け会社は通常、信用格付けを引き下げる。しかし今回、大手格付け会社はすでにロシアの格付け業務を停止している。
ロシア国債の法的状況は複雑だ。14年のクリミア併合や18年の英国での元スパイ毒殺未遂事件ですでに制裁を科せられていたロシアはウクライナ侵攻前から発行する国債にさまざまな異例な規定を付与している。
関係筋は「債務不履行を宣言することで制裁措置が効果的だったと主張できるほか、合法的な資産没収が可能になる」と指摘。こうした見方に対しロシアのペスコフ大統領報道官はこの日、ロシアの準備金は「不法に」凍結されたとし、これを利用しようとすれば「明らかな窃盗に相当する」と改めて警告した。
ロシアのモイセーエフ財務次官は先週「金融上の核爆弾がロシアに対し使用された」とし、「人類の歴史を通して、ロシアが現在直面しているような制裁圧力を受けた国はない」と述べていた。