安倍晋三元首相の国葬で、菅義偉前首相が追悼の辞で触れた岡義武著「山県有朋」の文庫版(左)と新書版(岩波書店提供)
安倍晋三元首相の国葬で、菅義偉前首相が追悼の辞で触れた岡義武著「山県有朋」の文庫版(左)と新書版(岩波書店提供)

 27日に実施された安倍晋三元首相の国葬で、菅義偉前首相が弔辞で言及した政治学者岡義武氏の著書「山県有朋」が反響を呼んでいる。出版元の岩波書店は28日までに重版を決定。書店には問い合わせが相次ぎ、担当者は「弔辞で取り上げられるとは思っていなかった」と驚く。

〔写真特集〕安倍晋三元首相の国葬

 菅氏は弔辞で、議員会館の安倍氏の机に読みかけで置いてあった同書に触れた。端が折られたページには、山県が暗殺された盟友伊藤博文をしのんで詠んだ歌にマーカーで線が引いてあったといい、菅氏は自身の思いに重ねて紹介した。

 その後、ネット通販大手のアマゾンで同書のランキングが急上昇。ジュンク堂書店池袋本店など東京都内の大型書店でも在庫がすぐに売り切れた。

 同店の担当者は「最初はなぜ売れ始めたのか分からなかった」というが、その後も問い合わせが続き、急きょ追加の発注をしたという。「読書離れが言われる中、普段本を読まない人が書店に足を運ぶきっかけになれば」と話す。

 岩波書店の担当者は「もともと一定数売れている書籍で、弔辞で触れられたことと在庫が少なかったことが重なって重版を決めた」と説明した。